goodbye,youth

増子央人

2022.02.20

機材車は仙台から名古屋へ向かう。山の向こう側には薄い雲が広がり、空と雲の境目が曖昧になっている。強風で何度も機材車が揺れている。

馴染みのない街を歩くことは凄く刺激的で、それだけで気持ちが高揚する。初日の岡山、ライブが終わって店長と話をしていると、今日はいつもこの辺でライブをしている地元のバンドマンも沢山来てたと言っていて、なんだか嬉しかった。ライブ中は色んな感情が入り乱れて気持ちが昂る。あそこまで気持ちが昂ることは、日常生活に置いて他にない。みんなの感情も、声が出せなくても伝わってくる。2本目の福岡、First day songの前にえーすけがしていたMCで、あの歌詞を書いたときの気持ちを初めて聴いて、あの曲がより好きになった。偶然映画の話がきて、原作の小説を読んだえーすけが書き下ろした曲だが、アルバムPure Blueの次に出来た曲がFirst day songというのは必然だったように感じた。

昨日の仙台では、九龍ジェネリックロマンスに出てきそうな、とても良い雰囲気の喫茶店を見つけた。あまりに雰囲気が好きだったので店の音も聞こうと思いイヤホンを外して流れてくるラジオに耳を傾けていると、今の音楽業界は配信がメインなのでCDが売れない、配信だけではレコード会社は儲からない、昔に比べて大変になっている、とかなんとかとラジオのパーソナリティが喋っていたのでなんかうるせ〜と思いイヤホンをつけ直して好きな曲を聴いた。ライブハウスに入ると、郡山PEAK ACTIONのステッカーが楽屋に置かれていた。ステッカーには店長のジョンさんからのメッセージが書かれていた。いつも仙台に来たときにお世話になっているイベント会社の人が前日に郡山PEAK ACTIONに行ったらしく、そのときにジョンさんが渡してくれたと言っていた。あの場所にも沢山の想い出がある。こんなことは長くバンドを続けていてもそんなに頻繁に起こることではない。嬉しかった。大切に想ってくれる人たちのことは大切にしたいと思った。2本のライブを終えて、仙台では少しセットリストを変更した。何度も感情が爆発した。底からこみ上げてくるあれが何だったのかは今思い返してもわからないが、血は何度も沸騰した。

きっとこの綺麗な日々のこともいつか忘れる。そのときは自分にとってその想い出が必要では無くなったときなので、いつかそんな日が来ても仕方ないかと思う。人はすべての想い出を持ったまま生きることができないらしい。それでも今はとにかくあの場所で大きな音を鳴らしたい。あの瞬間だけが本物だと思う。