goodbye,youth

増子央人

2022.03.11

ツアーが終わる頃には少し暖かくなっているんだろうと初日の岡山を歩いているときに思った。案の定、今奈良に帰る車内で汗をかいている。日差しが鬱陶しい。時間はどんどん進んで、冬の終わりと同時にこのツアーも終わってしまった。

昨日のツアーファイナルはキャパ制限こそあったが、椅子ありのZepp Diver City TokyoがAge Factoryを大好きな人たちで埋め尽くされていた。5年前に初めて新宿LOFTでワンマンをやったとき、おれらのことを大好きな人たちだけで埋め尽くされたフロアに興奮したあのときの気持ちを今でも覚えている。このツアーでステージに立って、ゆっくり少しずつフロアが大きくなっていることをようやく実感した。昨日のスタートは少し押して舞台袖のデジタル時計の表示は19時8分、SEが流れ始めたとき、もうすぐツアーが終わるのかと思うと少し寂しくなった。やっぱりAge Factoryを好きな人たちがおれは大好きで、あの青くて儚くて衝動的なフロアがどこまでも広がってほしいと思った。みんな間違っていない。

このツアー中、色んなことがあった。スタッフと何度もミーティングをして、春からのAge Factoryの動き方を話し合った。音響、事務所、マネージャー、照明、VJ、サポートギター、ローディー、舞台監督、イベンター、グッズ担当、現地の方々、そして来てくれたみんな、全員がいてやっとこのツアーが成り立っていて、おれたち3人だけでは何もできていなかった。それは勿論今までもずっとそうだったが、このツアーでより強くそのことを感じた。1人1人の仕事を理解し、どんな気持ちでバンドに関わってくれているのか、本当はもっと早くに知るべきだったが、このツアーで知ることができてよかった。

セミファイナルの大阪を終えたあと、Pure BlueのMVが完成した。初めて仕事をお願いした監督の井手内さんがこの曲は奈良で撮りたいと言ってくれて、1週間ほど奈良に滞在してメンバー3人の好きな場所を撮りに回ってくれた。どういう作品になるのか想像できなかったが、完成したものを見てからとりあえず外に出たくなり、近所を歩いた。いつもの道がいつもより愛おしく感じて、何もかも、全部上手くいけばいいのに、と思った。

ライブ中は無我夢中だったが、えーすけがBlinkを歌い始めたとき、ようやく終わることを実感した。ツアーが終わっても、旅はまだ続いていく。また新しい景色と出会うため、機材車は高速道路を走って奈良へ帰る。