goodbye,youth

増子央人

2018-01-01から1年間の記事一覧

2018.12.21

窓の向こうには青空、暖房の付いたこの部屋は乾燥していて空気が悪い。外は冬、おれは半袖でバイト先の居酒屋の個室に寝転がっている。休憩時間はもう少しで終わる。今年の年末年始はバイトすることになった。あれ、もう今年が終わる、部屋に置いてある空き…

2018.12.17

高3の夏、そのとき組んでいたコピーバンドのスタジオで、初めてRe viewのCDを聞いた。青い目のジャケットで3曲入りの1st ep。同い年で、全部自分たちのオリジナルの曲だということを聞いて、とてつもない衝撃を受けた。こんなにカッコいい奴らが同い年で奈良…

2018.12.02

渋谷www xでのワンマンライブが昨日終わった。ずっと昔から見てくれていた人たちは尚更、昨日の夜の光景がどれほど特別なものだったかわかると思う。ステージから見えたみんなの顔は、とても輝いていた。何度も何度もグッときて、涙を堪えた。感情が高鳴れば…

2018.11.17

機材車は福岡から奈良へ帰る。ircleとbachoと回る二日間が終わった。 昔、大学辞めて就職をせずバンドをやると言ったおれに母さんは、大人になって惨めな思いをするのはあんたやで、私はあんたにそうなってほしくない、と言った。惨めとは、一体何だろう。母…

2018.11.10

高松を出て機材車は高知へ向かった。真っ白な画用紙の上にポスターカラーの青をぶちまけたような真っ青な空は、あそこまで青いとおれとは全く関係のないような、宇宙の果てを見ているような、テレビのリゾート地特集の番組で遠い海外の透き通る綺麗な海を見…

2018.11.05

東館駅から郡山駅に向かう列車は風景とは似合わないような近代的な見た目で、列車の中にはトイレまで付いていた。緑に覆われた山の中を鮮やかなペンキで塗られた列車が走る。たまに鳴る汽笛の音が、山の風景にとても似合っていた。 昨日、父はライブハウスへ…

2018.11.03

リハーサルが終わり、ライブハウスを出て、去年ツアーで郡山に来たときに行った古着屋に行ってみた。あそこの店員さんはとても綺麗で、確かあのとき、少し話をして、おれは気に入った茶色のフリースを買った。まだあの人はいるかなと、少し期待して古着屋へ…

2018.11.01

昼前に寒さで目が覚めた。カーテンを開けると窓の外は冷たそうな灰色の空気で塗り潰されていた。去年買った厚手のパーカーを引っ張り出して、去年と同じように着てみた。夏を思い出そうとしても、もう随分昔のことのように感じて、蝉の声も、山の上に伸びる…

2018.10.25

この前、TSUTAYAでDVDを借りて、映画を見た。犬の話だった。頭の中は、昔飼っていた源太郎のことでいっぱいになった。その映画は、犬は死んだ後に転生して、昔の記憶を持ったまま、また犬になるって話だった。そんな話、ないとはわかっているが、その話を信…

2018.10.23

雨の奈良を抜けて機材車は昨日と同じ、神戸へ向かっている。さっき奈良を出る前に奈良駅前で食べたカツ丼でお腹の調子が良くない。目を閉じれば鮮明に思い出せるほど、瞼の裏には昨日のTHE NOVEMBERSのライブが焼き付いている。後ろの照明がまるで爆弾のよう…

2018.10.18

バイト終わり、2曲分歩いて24時間営業の定食屋へ行った。690円の唐揚げ定食が一日を閉める。ここに来る途中にあるあのラブホテルは少し前に改装工事があって、名前も変わってしまった。帰り道、信号の光が一定のリズムで点滅、耳元の音楽のテンポとは何一つ…

2018.10.16

肌寒い朝、ベッドの中でアラームを10分後に掛け直して二度寝をした。10分後に鳴り響いたアラームをすぐに止めてベッドの外へ出た。すぐにレコードを回して、顔を洗った。昨日の酒がうっすら残っていた。三日前からカーテンレールに干しっぱなしになっている…

2018.10.11

昨日GOLDを発売した。バイト先へ向かう朝焼けの中、好きな音楽を聴きながら歩いた。GOLDも聴いた。おれはなんとなく、大丈夫なんじゃないかと思った。全部。来月の家賃のことも、年金のことも、好きだった人のことも、実家で一人暮らしをする母さんのことも…

2018.10.04

先月26歳になった。生活は相変わらず、苦い奈良の空気を吸い込んではコンビニの缶ビールで日常を誤魔化している。体に悪そうなものばかりを摂取して、季節が乱暴に変わっていくのを1Kの狭い部屋から他人事のように傍観していた。好きなあの邦画のように、特…

2018.09.19

巣鴨のカプセルホテルを早朝に出て、車で埼玉へ向かった。今日はMV撮影をする日。都会から田舎へ車は進んだ。相変わらず田んぼの稲はどの土地のものも美しい。金木犀の香りや、赤トンボ、心地良い風なんかが、パレットの上に赤色の絵の具を出して、ボードを…

2018.09.15

朝方の4時頃奈良に帰ってきた。部屋に着いて思い出したが、そういえばこの遠征に出た当日は、確か昼の1時頃に奈良を出た。そしてその日は朝の10時頃まで飲んでいた。居酒屋を二軒はしごして、その後なんだか大勢がおれの部屋に来たがあまり覚えていない。そ…

2018.09.12

遠征中は、沢山書きたくなる。たぶん、いつも見ないものを見るし、いつも会わない人と会うし、いつもより1人になれるからだ。ずっとどこかへ旅をしていれば、ずっと何かを書くことができるんじゃないかと思う。機材車の窓からは青空が見える。この遠征中ずっ…

2018.09.11

半袖じゃ肌寒いくらいに風が涼しい。西永福駅で渋谷行きの電車を待っている。目の前をおれの苦手な香水をつけた男が通り過ぎた。その嫌な香水の匂いをかき消すようにホームに電車が流れ込んだ。やはり少し寒い。昨日機材車で見た映画を思い出そうとした。あ…

2018.09.08

広島から大分へ向かう車内、外は雨が降っている。遠くの山には天女の羽衣のような薄い雲が山にかかり、幻想的な景色になっている。その手前を見ると田んぼには稲が背丈を揃えてびっしりと並んでいる。とても綺麗だ。台風にも豪雨にも負けず、誰に言われるで…

2018.09.05

大阪駅から奈良駅へ帰るまでに見える街はところどころが昨日の台風の影響で荒れている。根っこごと抜けて倒れている木、屋根の上で倒れているアンテナ、瓦の剥がれた屋根。電車の中、ビールを飲みながら他人事の景色を傍観する。目の前の向かい合う席には幸…

2018.09.01

左手に大きな富士山が見える。えーすけが車の窓を開けると涼しい風が流れ込んできた。山中湖が近い。昨日で8月が終わった。 例えば文字で人柄は作れる。例えば金があれば良い人間になれる。それらは正しくはない。が、正しくもある。文章は時間をかけて生み…

2018.08.28

昼前に起き、顔を洗って寝癖を直して髭を剃って掃除機をかけた。誰のかもわからない長い髪の毛が轟音の中に吸い込まれて行った。いつものカレーうどん屋さんに行った。勿論タオルを持って行った。この前は汗で首からかけていた紙エプロンがちぎれた。その店…

2018.08.25

少し寝坊して朝からのバイトに遅刻した。バイト先には店長と係長が出勤しており、おれはキッチンにいた係長と無駄話をしながら仕込みをしていた。何故か話の流れでおれは不意に、自分の家の話をしてしまった。話をした直後に、いや、正確には話をしている最…

2018.08.24

野菜ジュースのオレンジがティッシュの白を染めた。最近野菜を食べていない。バイトから上がり、露出度の高い外国人観光客の胸を惰性で見ながら、家へ帰った。レコードが回る16時前、クーラーと扇風機をつけた。もう少しでスタジオへ向かう。一昨日の朝、夜…

2018.08.21

昨日映画を3本見た。王将で焼飯とエビチリを食べた。お腹の調子はずっと悪かった。涼しくなって夏の終わりかと思っていたらまたすぐに暑くなった。ああ夏が終わるかなんてどうでもいい。最近レコードを買った。何がいいかって?そんなのわからない。音の違い…

2018.08.01

レコーディング7日目。えーすけが歌っている。おれはその歌をブースで聞きながらネットに上がっている怒髪天増子さんのインタビューをひたすらに読んでいた。増子さんのインタビューにはほぼ毎回ブッチャーズの吉村さんの話が出てくる。そしておれは気がつく…

2018.07.26

レコーディング2日目が終わり、コンビニで塩焼きそばを買って、部屋に帰ってきた。電子レンジがないから買った塩焼きそばはコンビニのレンジで温めてもらった。部屋についたらすぐにシャワーを浴びないと何もする気にならないので、先にシャワーを浴びた。髪…

2018.07.13

機材車は岩手に向かう。SiMとのツアーは半分が終わり残り2本。昨日は青森で朝4時まで飲んでいた。昨日というか今朝。ほぼ面識のないSiMがツアーに誘ってくれた経緯は、マキシマムザホルモンのりょうさんがSHOW-HATEさんにおれらの曲を教えてくれて、今年の5…

2018.07.11

夕暮れの青森港に太鼓と笛の音が響く。ねぶた祭りという何やら大きな祭りが8月にあるらしく、その練習をしているっぽい。イヤホンを外して太鼓と笛の音を聞いた。太陽が沈んで、見たこともないような綺麗な色が空を包んだ。あれは何色なんだ。一番近い色を敢…

2018.06.29

夜勤明け、15時ごろに暑さで目が覚めた。顔を洗い、寝癖を直して、借りてきたDVDをデッキに入れ、映画の予告を見ながら冷蔵庫の缶ビールを取り出した。気がつくと映画は終わり、無音のエンドロールが流れて、外はもう薄暗くなっていた。水を一口飲んで、なん…