goodbye,youth

増子央人

2019.11.20

19日の夕方、バイトを終えて近鉄電車に乗り難波へ向かった。高岡と数年ぶりに飲む約束をしていた。高岡は昔HEAD LAMPでドラムを叩いていて、増子くんいっしょに閃光ライオット出ましょうよ、とえーすけに誘われておれがAge Factoryのサポートをしていた頃に出会った。今はドラムをやめて大阪でラーメン屋の店長をしているが、昔からたまに連絡を取っている。難波へ到着して一軒目は串カツ屋に行き、高岡の希望で二軒目にHEAD LAMPの元メンバーのけいごが最近開いたバーへ行った。けいごとも物凄く久しぶりに会った。みんなバンドを辞めても、各々の道を一生懸命に走っている。迷って出した決断はすべて正しいんだと最近よく思う。そう思っていたい。けいごの同級生が1人カウンターで飲んでいたのでその子とも一緒に飲んだ。声が高くて、話し方や声色がお笑い芸人のダンビラムーチョのボケの方にとても似ていた。高岡がお祝いやからと言ってシャンパンを開けた辺りからおれの記憶はほとんどない。散々飲み散らかし、1時ごろに高岡が自分の家にタクシーで連れて帰ってくれたらしい。家の近くの吉野家で牛丼大盛りを食べたらしいが、その記憶もない。朝起きると高岡の部屋だった。本当にありがとう高岡。高岡は久しぶりに声が聞きたいからと家に帰る途中おれのiPhoneえーすけとなおてぃに電話をかけていたらしい。昨日えーすけとなおとと喋ったわと嬉しそうに言っていた。おれはその間も起きていて訳の分からないことを喋っていたらしいが、そんな記憶は脳味噌のどこをどう探しても見つからなかった。iPhoneになぜかハルカミライの須藤から朝方3時に着信履歴があった。確かこの日はハルカミライも難波でライブがあったので、打ち上げで泥酔してかけてきたんだろうと思いLINEで確認したらやっぱりその通りだった。もう少し電話が早かったらおれは泥酔したまま電話を取り打ち上げ先に向かっていたかもしれない。そうなると大惨事になっていたと思うので電話を取らなくて本当に良かったと思った。12時頃に2人で家を出て高岡が店長をしているラーメン屋に行きラーメンと炒飯と餃子を食べた。大二日酔いだったのでメニュー表を見て吐き気を催したが、食べ出すと大丈夫だった。とても美味しかった。ラーメン屋を出てから買ったばかりだという車で奈良まで送ってもらい、この日仕事が休みだった高岡が大仏が見たいと言うので奈良公園を案内した。男2人で奈良公園へ行ったのは初めてだった。そもそも、友だちと2日も一緒にいるということ自体が初めてだったかもしれない。たまにはこういうのもいいのかもしれないと思った。15時ごろに解散した。良い時間だった。

そのあとにローソンでオレンジジュースと缶コーヒーを買って、THROAT RECORDSへ行った。この日で7周年だったらしい。五味さんに差し入れのつもりで缶コーヒーを買ったが、THROAT RECORDSにはコーヒーメーカーがあったことをローソンを出てすぐに思い出した。しまったと思ったが、まあいいかと思いそのまま向かった。店へ入ると五味さんがカップ麺を食べていた。最近のバンドの話や家族の話なんかをした。レコードを何枚か試聴して、結局試聴していないFastbacksのライブ音源を買った。これ買います、と言って五味さんにレコードを渡すと、え?ほんまに買うの?と売っている本人が驚いていた。わざわざ盤で買うやつは変なやつしかおらんと思ってるから、と笑いながら言っていた。確かに最近はストリーミングで何でも聞けるので、わざわざ盤で買わなくても、と思うが、やはりアナログにはアナログの良さがあると思う。音がどうとか、そういう話は全然わからないが、聞くことに手間がかかる、というのは素敵だなと思う。勿論聞くことに手間がかからない、というのも同じぐらい素敵だと思うが。CDもレコードも、初めて聞くものを自分の部屋で1人で再生するときのワクワクは、ストリーミングで好きなアーティストの新譜を初めて聞くときのワクワクと少し違う気がする。お店に行って試聴したりジャケットで選んでみたりして音源を買って家に帰ってパッケージを解いて再生する、このちょっとした労力、かかった時間もひっくるめて好きなんだと思う。親指一つ動かすことに、時間も労力も思い出もほとんど存在しない。THROAT RECORDSがある通りには、やすらぎの道という名前がある。たまに店によって五味さんと話をすることが自分の生活の一部になっている。たまにしか行かないけど。やすらぎの道のあの場所で、これからもずっと続いてほしい。THROAT RECORDSを出てスタジオへ向かった。家へ帰る頃には日付が変わっていた。素敵な二日間だった。