goodbye,youth

増子央人

2022.05.06

先週の金曜日、窓を叩く雨音で目が覚めた。窓の外ではベランダの椅子が飛んでいきそうなほどの風が吹いていて、時計の針は16時を回っていた。ご飯を食べ、髭を剃って久しぶりに革ジャンを羽織り家を出た。

THROAT RECORDSへ寄ってビールを1本だけ飲み、近鉄電車に乗って映画館に向かった。ようやく「今はちょっと、ついてないだけ」を観に行けた。この日は奈良の劇場での公開初日で、ストリーミングで再生できる映画のデータを貰っていたが、最初はどうしても映画館で観たかったので、そのデータは開かなかった。腹は減っていなかったが映画館へ来たのでポップコーンとドリンクを頼んだ。セットにするとポップコーンは大きめのMサイズしか頼めないと言われ、絶対にそんなに食べれないと思ったが仕方なくMサイズを頼んだ。子どもの頃、ドリンクは必ずメロンソーダを頼んでいたが、いつからかレモンティーとか白ブドウジュースとかそういう類のさっぱりした無炭酸のドリンクを頼むようになった。客はおれの他におじさんが2人だった。映画の登場人物と自分の父が勝手に重なり、なんでもないシーンで涙が出た。とても好きな、優しい映画だった。First day songへの導入がとても素敵で、作品の一部になれたことを嬉しく感じた。エンドロールが流れ終わって客席の電気がついたとき、案の定ポップコーンは半分も減っていなかった。

最近久しぶりに、福島のばあちゃんから手紙が届いた。父からユーチューブのドリップ東京の動画を見せてもらい、それに感動して、手紙を書いたらしい。ユーチューブでその動画を見ているときの父はこわれてしまうほどの笑顔ですよ、と書かれていた。父のこわれてしまうほどの笑顔は容易に想像できた。相変わらず、優しい文字と、優しい文章だった。

一昨日からとても晴れている。スーパーの駐車場、どの方角を見ても緑色の山が見える。4月はライブで色んな場所に行ったので、いつもの景色を見て奈良にいることを実感する。