goodbye,youth

増子央人

2021.12.02

スタジオでは新曲作りが行われている。今日はスピーカーから鳴る16ビートに3人とも体を揺らしていた。

いつの間にか12月に入っていて、今住んでいる部屋で過ごす冬はとにかく寒いので、次第に冷たくなっていく奈良の空気に嬉しさと不安を感じる。

あまりの寒さに週3で銭湯に通っていた今年の2月、初めて行ったJESSEさんのスタジオの壁に、青く光るアルファベット4文字のネオン管が飾られていたのを観て、おれらの明日からのツアータイトルもHOPEって言うんですよ、と話すと、JESSEさんは机に登ってそのネオン管を外し、やるよ、と言って渡してくれた。スタジオができた頃から飾られていたという、HOPEと書かれたそのネオン管は、次の日からえーすけがギターのヘッドにはめ込んで、東名阪をいっしょに回った。

先日、カメラマンを目指して上京した後輩が奈良で個展を開いていたので観に行き、そのあといっしょに飲みにいった。東京より奈良の方が芯のある寒さって感じがして、僕好きです、と帰り道そいつが話していて、おれは寒いのが苦手やからいらんけどなあ、と思ったが、酔った頭で「確かになあ」とか適当なことをいいながら歩いていた。家具作りをしているそいつの父が作ってくれたという額縁に飾られた数枚の写真はどれもぼやけていて、とてもリアルに感じた。