goodbye,youth

増子央人

2019.06.18

"ケンさんがアダマと組めばどんなすごいことでもできると思います、ぼくは、たとい、小さくても自分のことをしたいのです。"

レコーディング最終日、録りたい音は前日までにすべて録り終えていたので、今日はエンジニアさんが1日中作業をする日だった。おれは奈良から持ってきた村上龍の69を読み終えた。とても面白く、久しぶりに、まとまった時間があったというのもあるが、1日で読み切った。えーすけもこの小説が大好きだと言っていた。上の文は、小説の中で、岩瀬がイヤヤを抜けるために書いた手紙の言葉だ。溢れ出す青春は、誰にも邪魔されることなく、走り抜けるべきなんだ。邪魔をするものがいるのなら、それが教師でも、警察でも、神様でも、ツバを吐いて中指を立てて歯向かわねばならない。そして、全速力で逃げればいい。「想像力が権力を奪う」素敵な言葉だ。もっと人生を楽しまなければいけないと、強く思った。人生を楽しむというのは、例えば友だちたちと夏に海辺へ行きBBQをしたり、散々飲んでクラブへ行きすぐヤレそうなお姉ちゃんをナンパしてホテルへ行ったり、そういうことをしなくても、できなくても、ブックオフへ行きタイトルだけで読みたくなった本を探して買ったり、缶ビールを飲みながら街を歩き好きな音楽を大音量で聞いたり、そういう楽しみ方もあるので、自分の楽しいを追求していきたい。世間の楽しいに自分の楽しいを合わせる必要は一つもない。人生に他人からのいいね!なんて必要ない。

機材車は富士山を背中に奈良へ走る。山中湖を離れた途端に気温は暖かくなり、壮大な山の力を感じた。おれたちはいつも自然の支配下のもとにいつ奪われるかわからない平凡な生活を送っている。少しの間奈良へ帰り、また遠征が続く。26歳の夏を楽しみたい。全力で物事に取り組む際、年齢というのは関係ない。そう言い続けることが大事なんだと思う。笑っているのはいつもベンチにすら入れない奴らだ。イヤホンをつけて、目を瞑ってしまえば世界にはもうおれ1人しかいない。それでも気になるときは外野で騒いでる奴らの目の前まで行き、そいつらの顔にツバを吐き、中指を立てながら全速力で逃げるんだ。イヤホンはつけっぱなし。そんな奴らの話は聞く必要もない。想像するだけで笑えてくる。きっとそんなこと怖くてできないけど。想像して、笑うだけでいいんだ。想像力は権力を奪う。