goodbye,youth

増子央人

2020.03.20

駅前では"冤罪の人々を救おう"と書かれた横断幕を持った人たちがメガホンで通行人に向かって語りかけていた。春以外誰も聞いていないように見えた。誰にも受け取られないチラシ。イヤホンから流れる音楽の音量を上げた。昨日今年になって初めて上着を着ないまま外へ出た。東京では桜が咲き始めているらしい。ダメもとでいつもの蕎麦屋に行ってみたが、やはりシャッターは閉まっていた。店主、倒れてたりしないよな。どうかしょうもない理由で休業していますように、と心の中で静かに願った。駅下の広場では高校生ぐらいの男の子が1人でスケボーの練習をしていた。何人かで集まって練習している人たちをたまに見ていたが、この日は1人だった。なんかいいな、と思った。

一昨日行った定食屋で、ご飯を食べ終えた小さな男の子が席を立って出口まで歩きながら大きな声でごちそうさまでした!と言った。周りを気にせず感謝の言葉を堂々と伝えるその姿勢が素敵だった。おれはもう大人なので周りのことをよく気にしてしまうが、この日はいつもより少し大きめの声でご馳走様でしたと言い店を出た。店員さんには聞こえてなさそうだったが気分は良かった。

月曜日、スタジオを終えて松屋へ行き、帰り道に1人で歌いながら歩いているとなんだか無性に大きな声で歌いたくなりアパートの入り口で引き返してカラオケへ向かった。1人で1時間歌い、深夜1時過ぎに家に帰ってきた。この日はよく眠れた。

今日は夜に映画を一本見ようと思っていたが、バイトが終わって家に帰ってきてソファに座って缶ビールを飲んでいたら知らない間に寝ていた。左手に持っていた缶ビールはまだ半分以上残っていたがシンクに流した。机の上の柿ピーの賞味期限は3日前に切れていた。柿ピーに賞味期限ってあるんだ。

日々が雲のように流れていく。