goodbye,youth

増子央人

2019.08.23

最近は頭を使おうとしてもなかなか上手く働かず、やめてみようかなと思っていたのに気がつけばまた缶ビールのふたを開けている。そもそもやめてみようかな、程度の弱い意志ならまあそんなもんかとも思う。半分諦めているのかもしれない。クーラーはつけたまま扇風機をつけたり消したりして体の熱を取ることに必死で、外に出たいと思うのは日が沈んだ夜だけになった。昔はあんなに夏が好きだったのに。見ればほぼ毎回泣いていたバンドのライブで泣けなくなったり、これだけはやらないでおこうと思っていたようなことを平気でやったり、変わってしまったことが沢山ある。昔、大学時代の友だちのかずやが"害児"や"陰キャ"という言葉を頑なに使わなかったことを思い出した。周りのやつらがどれだけそういう言葉を使って会話をしていても、かずやだけはその言葉を使わなかった。その言葉を使っている人のことを否定したりはせず、ただ自分が使いたくないから使わない、と言っていた。かずやは今も、そういう言葉を使っていないのだろうか。

どこかの街で見た、アスファルトに額を擦り付けて通行人にお金を貰おうとしていたあのお爺さんは、この夏を超えることができたのだろうか。まだ通行人の前で土下座し続けているのだろうか。ふとした時に思い出す。まあ関係ないか。

先週の日曜日、久しぶりにDROP CLOCKでライブをした。いつも通り、友だちたちが見に来てくれた。ライブ前に3時間スタジオに入ったが、そこでもいつものようにメンバーは楽しそうに話しながら音を鳴らしていた。スタジオ内で転職やボーナス、残業といった単語が飛び交うのを聞いて大人になったんだなと毎回思うが、各々を取り巻く環境以外は、昔から何も変わっていない。この場所がなければとっくの昔に音楽を辞めていたかもしれない。やっぱりこの場所は大切なんだとその日再確認した。おれは誰にも属さないし、誰の色にも染まりたくない。

激しい夕立が奈良の街を叩いている。今日は気温がいつもより低い気がする。