goodbye,youth

増子央人

2017.11.14

ライブのない日々が終わりかけの秋に馴染んでいく。新しい音楽ばかりを探す。新しい本ばかりを探す。25歳のおれはビールが相変わらず好きで最近ホッピーなんか飲み出した。でも家では全然飲まないんだ。誰かと飲むお酒がやっぱり好きなんだと思う。でも散歩中に1人で飲む缶ビールは好きだ。自分でもよくわからない。この前近所のおじさんが原付を出そうとしたおれに、「事故らんようにな」と声をかけてくれた。初めてそのおじさんにそんなことを言われた。人に伝わっていくのは親切だけでいいなと思った。怒りは芸術に、自分の力に変えればいい。人に伝えるものじゃない。怒るということは、器が小さいことだと思う。そう頭では思っていても、イライラすることなんて日常に沢山溢れている。そんなもんなんだたぶん。それでも近所のおじさんがかけてくれた言葉や、渋谷の居酒屋で昼ご飯を食べたとき大将がおまけで出してくれた冷奴や、大分の薬局の薬剤師さんがくれた風邪薬や、雨の日にお客さんがくれたビニール傘や、友達が奢ってくれるビールなんかで、幸せな気持ちになる。そしてそういうことは、これから先も忘れないんだと思う。怒りの感情なんてすぐに忘れる。蓄積されるのは、小さな他人からの親切だけでいい。譲れない怒りは持つべきだ。ただほんの少しでいい。あとは適当に忘れていい。