goodbye,youth

増子央人

2019-01-01から1年間の記事一覧

2019.05.29

朝、いつものように家を出る20分前にiPhoneのアラームが鳴った。アラームを止めてApple Musicを開き、最近リリースされたALEX LAHEYの新譜を一番大きい音で再生した。髪の毛をシンクに突っ込んで全体を満遍なく濡らしてタオルで軽く水気を取りドライヤーで乾…

2019.05.24

福山から広島市へ向かう。最近、友だちの家で聞いてから、久しぶりにandymoriを聞いていた。今車内ではえーすけがiPhoneをBluetoothに繋げて音楽を流しているが、さっきandymoriの1984が流れてきた。えーすけはこういうときいつも洋楽ばかり流しているので、…

2019.05.16

近所の閉店したたこ焼き屋の前には新しい3階建ての小さなビルが建っていた。その場所はずっと工事中だったが防音シートがなくなってまるでそこに突然現れたかのように綺麗なビルが建てられていた。おばあちゃんが1人で経営していたたこ焼き屋の窓ガラスには"…

2019.05.10

窓から見える夕方の奈良に桃色の西陽が差し込み、どこからかカラスの鳴き声が聞こえてきた。カァ、カァ、と、街に夕方を知らせている。近くの神社で鐘が鳴った。その鐘の音はまるでおれにしか聞こえていないような、隔離された、少し侘しい音だった。いつも…

2019.05.04

先月から、バイト先の居酒屋に中国人の社員が入ってきた。以前までは大阪の系列店に勤務していて、4月で奈良に移動してきた。その人は50歳ぐらいで、もう20年以上日本で暮らしていて、日本語は一通り話せる。でも敬語はほとんど使えない。とても優しくて、親…

2019.04.23

なら100年会館の前の広い階段に座っている。休憩時間はあと30分程で終わる。スウェット一枚だけでも少し暑い。右手に持つハイネケンの瓶は中身がもう少しでなくなる。残っているビールは人肌ぐらいにまでぬるくなっている。やっぱりビールなんか早くに飲み干…

2019.04.16

薄く青い岡山の空に碁石のような鴉が一羽浮かんでいる。街はすっかり春めき、自転車にまたがる女子高生のスカートはやらしさを持たずに無邪気に揺れている。遠くの方に山が見える。綺麗な緑色をした木が生い茂り、山もまた春を歓迎しているように見える。 TH…

2019.04.03

奈良では桜が咲き始めた。部屋で久しぶりにラジオをつけた。FM89.4、中学生の頃によく聞いていた、アルファーステーションのチャンネルに合わせた。求めていないのに流れては去っていく雲のように、エレファントカシマシの四月の風やoasisのDon't Look Back …

2019.03.28

船は自らが意志を持っているかのように日本海の上を転覆することなく北へ北へと進んでいる。もうかれこれ17時間ほど船の上にいる。窓からは北海道が見え出し、それと同時にiPhoneに電波が入った。少しだけSNSを見た。奈良から持ってきた村上春樹の1Q84を昨日…

2019.03.13

春の代償で目が赤い。喉もかゆい。機材車はオレンジの無数の光の下を走り、大都会東京へ向かう。この前初めて東京タワーに登って、夜の東京を見下ろした。街に張り付くネオンは、福島で見上げた空に輝いていた星たちのように、無機質で、おれの想像の範囲の…

2019.02.21

喫茶店で店員に置かれた砂時計を無心で見つめていた。アナログで、原始的なこの時間の測り方には、言葉では表すことができない、非効率的な美しさがある。世界はすべてが効率化されていく。中国では、生まれてくる前の子の受精卵の遺伝子を編集し、HIVにかか…

2019.02.05

桜の見えるあのベンチに置いてきた感情はもうしばらく戻ってきそうにない。父と捕まえに行ったカブトムシは虫かごから飛び出してもう戻ってこない。母は家に1人なのに今日もお味噌汁を作り過ぎる。校庭を一人で走っていた妹は、今日も一人で東京を走っている…

2019.02.01

機材車は徳島から奈良へ走る。今日は打ち上げがなかったので、機材搬出をして松屋で飯を食べてすぐに高速に乗った。ライブ前、アフロさんとバイトの話をした。おれは何歳までバイトをしているだろうと少し考えたがそんなことは月の隣に光るあの星がどのくら…

2019.01.10

近所のダイコクドラッグに、外国人の女性店員がいる。ヨーロッパ系のその人は、驚くほど愛想が良い。ずっと笑顔で、とても丁寧に、一生懸命に接客をしている。話す言葉はカタコトの日本語だが、日に日に発音が上手くなっている気がする。それを見るたびに、…