goodbye,youth

増子央人

2020.11.07

一昨日の夜、五味さんから連絡をもらい、korekaraで飲んだ。翌日、二日酔いによる酷い吐き気を薄めるために水を飲みまくったがそのせいで胃がパンパンになり更なる吐き気に襲われた。どんな二日酔いも一瞬で治る薬があればと今までに何回思ったかわからない。スタジオではえーすけと将来の話をした。こういうことはそう頻繁にはない。冷静に話している風を装っていたがその場でぐるぐるバットを5回したら多分吐いていた。

コロナでライブができなくなったが、奈良での生活には何の支障もなかった。月に何本もライブをしていた頃に比べて生活は単調になったが、不快な変化ではなかった。刺激がない、同じ1週間の繰り返し、ああこれも別に悪くないな、なんてことも少し前まで思っていた。いや、今でもたまに思う。12月29日、ZEPP TOKYOでのワンマンライブで、何を思ってどんな感情になるのか、自分でもわからない。ただドキドキしている。

スーパーで買ってきたお惣菜を食べながらついさっきまでPELICAN FUNCLUBの配信ライブを観ていた。バンドは不器用で非効率的で無駄が多いけど、一番カッコいい。そう再確認した。

2020.10.22

最近の夜はパーカーを着ていても寒くなってきたので自分が聴く用の冬のプレイリストを作っていると、夏の夜用のプレイリストに入れていた曲とも何曲か重複して、そうか歌詞がわからなければ想像次第でその曲は夏の曲にも冬の曲にもなるのか、歌詞がわからないってのもいいね〜なんて思いながらアサヒの缶ビールをプシュッと開けて飲んだりしていた。セブンイレブンで買った柿ピーを一晩で食べ切れなかったので翌日の夜にまた食べようと思い袋を開けたまま机の上に置いていたら翌日の夜にはしなしなになっていた。なぜか柿ピーはしなしなにならないと思っていた。ピーナツまでしなしなになっていて、おれの頭にははてなマークと泣き顔の絵文字がぽつぽつと浮かんだ。

コロナのせいでライブ活動ができなくなり、うろこ雲のように規則的で穏やかな日々を過ごしている。バイトから帰ってきてやるべきことを終え、お笑いの動画を見て1人でケタケタと笑い、隣の部屋のおじさんが怒って壁を叩いてきたりしないかと怯えながら、それでもお笑い芸人たちの面白さにおれはケタケタどころかゲラゲラと笑い、笑いについてのみを追求し、人を笑わせるお笑い芸人という職業はなんて尊いんだ、よし生まれ変わったら漫才師になろう!いや、コント師も素敵だ!いやでもやはり漫才だ!なんて浅はかなことを考えたりしている。もちろんこんな日々が毎日続いているわけではなく、サブスクに並ぶ聞いたことのないアルバムたちを聴き漁ってドラムがかっこいい曲を頭の中でコピーしたり、やろうと思っていたことが何もできなくて罪悪感とともにベッドに入って眠る日もある。こんなとこに金木犀あったんだ、とか、あれ絶対火星、とか、あの犬は何と何のミックスだ?とか、ライブしたいな、とか思っていると、コロナが流行り出してからもう8ヶ月近く経っていて、この生活にも慣れてきてしまった。バンドをしている友だちたちは、今どんな生活をしているんだろう、みんなこんな風に、どっちにも転んでしまいそうな場所に立っているんだろうかと気になったりするが、他人は他人だしな、なんでもいいや、聞くのも面倒くさいし、と部屋に帰って自分の世界に没入する。ベランダの向日葵のミイラ早く片付けないと。もうすぐ冬が来る。

2020.10.08

昨日の夜から雨が降っている。朝、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえたので雨が止んだんだと思った。まだ起きる時間ではなかったのでベッドの上でぼーっとしているといつの間にか鳥の鳴き声は聞こえなくなり、起き上がるときには雨の音がしていた。外は寒そうだったので3年前に下北沢で買った黒いアウターをハンガーラックから取って埃を払った。

最近はというと同級生と久しぶりに飲んだり奈良ネバーランドに遊びに行ったり機種変したり初めてお笑いライブの配信チケットを買って家で観たりした。誕生日に福島の婆ちゃんから手紙が届いた。父からは本が届いた。自分では買わないし家にあってもよっぽどのことがない限り読まないタイプの本だったが、読んでみようと思った。まだ1ページも開いていないけど。

今日は寒い。アウターを着て外に出て正解だった。父が送ってくれた段ボールの中には本の他に白いメッセージカードのようなものも入っていた。カードには、"離れていても いつも 応援している"と書かれていた。なんちゅうくさいセリフを、と思ったが、嬉しかった。雨の日のバスは時刻表通りに来ない。傘をさしてバスを待つ。

 

 

 

 

 

2020.09.18

予定より少し早く家を出た。松屋で牛丼を食べてから喫茶店に入り、トイレ前の長机の一番端の席に座った。目の前にカエルの置物、窓の向こうに黒のワゴンRが見えた。イヤホン越しに聞こえる他の客の喧騒が曲のアレンジみたいに聴こえた。

部屋でコンビニ弁当を食べながら先輩や後輩が送ってくれた配信ライブの動画を見て、バンドってカッコいいなと思った。カラフルだった視界から色が抜けていく。まるで他人事だった。ベッドに寝転がって何も目的がないのにiPhoneYouTubeSNSを見て、しばらくしてからGYAOで配信されている今週の有田ジェネレーションをまだ見ていないことに気が付いてそれを見た。

帰り道、半袖で乗った原付は少し寒くて嬉しくなった。今年の冬は去年買って結局一度も着なかったタートルネックのセーターを着るんだろうか。夏の初めにネットで買ってしまった紺のパーカーは絶対に着よう。じいちゃんに貰った革ジャンはなんか似合わなくて結局去年一回も着なかった。

何もしないまま九月になった。稲穂が揺れて、秋の音がした。

 

2020.08.29

少し前にベランダの向日葵が咲いた。不揃いながらもすべての蕾が太陽に向かって開いていた。間引きしなかったせいで全滅するかもしれないと思っていたので綺麗な黄色を見たときは嬉しかった。しかし5日も経つと花は枯れて、小さくしおれていた。痩せこけて茶色くなった茎に、カナブンが止まっていた。何に対してかよくわからないけど、生命の神秘を感じた。

今まで自分1人で花を育てたことがなかったので、間引きという行為の存在すら知らなかった。種を買った時に付いてきた説明書には「葉が大きくなってきたら間引きをして」と書いているだけで、間引きがどういう行為なのかは書いていなかったので、まあ文字の意味からなんとなく予想はできたが、一応ネットで調べた。間引きがどういう行為か理解できたがどの角度から解釈しようとしても気分が良いものではなかった。日頃から植物を育てているような方たちからすれば、何を甘いことを言っているんだ、というようなことなんだろうと思いながらも、全然受け入れることができなかった。結局3日ぐらい決断できずに放置していたが、どの芽も切らずに水やりを続けた。数日経つと、不揃いな大きさの花がすべての蕾から咲いた。本当に良かったと思った。しかし不思議なもので、花が咲くと途端に興味が薄れて、ベランダの窓を開けて水を少しあげるという行為の面倒くささレベルが物凄い勢いで上がり、花が咲いて2日も経つと水やりをやめていた。クーラーの効いた涼しい部屋のソファに座って窓の外で痩せこけていく向日葵を眺めていた。誰も死んでほしくないなんて思っていたおれはどこに?でも自分の気持ちの変化にはあまり驚かなかった。

今年の八月の思い出といえば向日葵が咲いたことぐらいで、こんなに何も起きずに終わろうとしている八月はいつぶりだろう。蝉が死んで、向日葵が枯れて、八月がもうすぐ終わる。

先日EVERYNIGHTツアーの中止が発表された。各地でのツアー、対バン、打ち上げ、初めて訪れた町を好きになる感覚、ステージから見えるみんなの表情、ライブ中の高揚感、どんな感じだったか、きっと一度やれば全部思い出すんだろうけど、今はちゃんと思い出せない。やれなくなってちゃんとわかった。あれが好きだった。また会える日までダラダラと生きてるので、みんなもどうかその日まで元気で。

 

2020.08.04

昨日は身体に良さそうなことをしたから、今日は身体に悪そうなことをしよう、という思考を日々交互に繰り返している。毎朝アラームが鳴る前に蝉の鳴き声とカーテンの隙間から差し込む日差しで目が覚める。朝までつけっぱなしのクーラーの冷気で身体が重たい。

気がつけばもう八月になっている。この生活にも慣れてきた。同じような一週間がさらさらとどこにも引っかかることなく流れていく。車窓から見える入道雲を見ても現実のものとは思えなかった。もう以前までの夏は遠い別世界のことのように感じる。あの雲も多分誰かが空に描いたものだろう。匂いが好きだから買ってきた蚊取線香は、よく考えたら外が暑過ぎてずっと窓を閉めたままにしているので使う機会がない。秋になったら窓を開けてベランダに蚊取線香を置こう。八月の太陽が出ている日中はできれば一歩も外を歩きたくない。

大好きなコウテイビスケットブラザーズが最近賞レースで優勝して嬉しかった。コウテイは、ネタ合わせの回数、練習量が他のコンビの比にならないぐらい多いという話を少し前に聞いてから更に好きになった。少し前にインディアンスのしくじり先生を見てとても感動した。日本一のコメディアンだって誰とも話したくない日があるかもしれないし、世界一のロックスターだって粉薬を飲んだら咳込んで全部ぶちまける日があるかもしれないし、みんなが羨む美貌のアイドルだって朝起きたら口が臭い日があるかもしれない。結局はみんなただの人間で、日々生活をしている。どれだけ生活を重ねて歳をとって色んな知識を得ても、みんな同じなんだと思っていたい。

 

2020.07.22

朝起きると窓の向こうから蝉の鳴き声が聞こえた。うーわ夏。あつ。だる。もう何年か前から夏に対してそんなことしか思わなくなった。祭りやプールや花火大会には昔から変わらず魅力を感じるが、夏の暑さはそれらの魅力を忘れさせるほど酷い。顔を洗って窓の外を見ると、ベランダで育てているひまわりの芽が萎んでいた。え?え??と声に出しながら急いで窓を開けて様子を見るとしなしなに萎んで今にも枯れそうになっていた。なんで?昨日は元気やったのに?昨日の夜水をあげなかったから?でも昼前にはあげたで?プチパニックの中、液肥を大量にあげた。こういうときに液肥を大量にあげていいのかわからなかったが"生き返れ〜"と心の中で唱えながらジャバジャバかけた。たぶん腹ぺこのギンにご飯を出してあげたときのサンジはこんな気持ちだったんだと思う。たぶん違う。液肥をあげてから1時間ほどでみるみる回復して昨日の朝の元気な状態に戻っていた。植物ってこんなにレスポンス早いの?すげえ。めちゃくちゃ生きてるやん。悪かった、と思いながら少し感動した。

3日ほど前、居酒屋の店長をしている同級生と道で久しぶりに会った。そいつは二店舗の店長を掛け持ちしていたがコロナの影響で一店舗が潰れてもう一つもいつ潰れるかわからないと言っていた。そんな状況の中、ずっと付き合っていた彼女と先月に籍を入れたと言っていた。おれはそいつの彼女とも面識があったのでいつか結婚するだろうとは思っていたが、予想よりも早くて驚いた。なんだかとても嬉しかった。

今週いっぱいまで梅雨はあけないと天気予報士が言っていて今日も曇りのち雨の予報だったが昼過ぎには太陽が出ていた。もしかしたら明日の天気予報も外れて晴れになって、そのまま梅雨があけたりしないかなと思っている。