goodbye,youth

増子央人

2020.02.13

二年前に起こった東海道新幹線車内殺傷事件の犯人が弁護士に送っていた手紙の内容を少し前にネットで読んだ。正義、価値観はやはり人の数だけ存在して、自分と同じ考え方の人間なんて1人もいない。どんな理由や背景があろうと「見事に殺しきりました」なんて言葉を裁判所で言える人がそもそも同じ人間だとは思い難いが。「戦争をしないために殺した」と言ったトランプも。

京浜東北線に乗って、少し暖かい東京の街を座ったまま駆けている。足元の暖房で汗をかいている。ヒートテックなんて着てくるんじゃなかった。何歳になってもその日の気温に対する適した服装を掴めない。電車を降りて少し歩いた。暖かくて頭がぼうーっとしたのでマック・ミラーのCirclesを聞いた。奈良ではあり得ないほどの背の高いビルが向こうの方に見えた。ケンとアダマたちが封鎖した学校の屋上から垂らした「想像力は権力を奪う」と大書した垂れ幕をあのビルの屋上から垂らして、その隣のビルの屋上から「春よ永遠に」と大書した垂れ幕を垂らしたい。「花粉死ね!」でもいい。初めてスカイツリーを見たとき、巨人が東京に現れたとしたら真っ先にスカイツリーを引っこ抜いて武器にするだろうな、と思ったことを思い出した。…暖かくて頭がぼうーっとする上に天国からマック・ミラーの歌声が聞こえるので思考が段々薄くなってきた。