goodbye,youth

増子央人

2020.01.20

日替わりランチ、ライス大盛りで。大盛り無料の文字を見つけてほぼ反射的に店員さんにそう言っていた。言った直後に頭の中でまともなおれの思考が、いやいやお前大盛り絶対いらんから並みでよかったから、ハンバーグ一個で大盛りは割合いが良くないから、しかもお前腹の調子そんな良くないやん家出る前はうどんにしよかなあとか思ってたやんアホちゃう、などと眉間にシワを寄せて言ってきたがまったくその通りだと思いながら静かにメニューを閉じて水を飲んだ。昨日の夜に大阪王将で食べた‪"禁断のタルタル油淋鶏炒飯大盛り‬"という完全にアホのためのスーパー炒飯のせいでお腹のコンディションはすこぶる良くなかった。これもびっくりしたのだが、大阪王将に入る前はいつものうどん屋さんへ行こうと思っていたのに、もしかしてこの時間ならまだ大阪王将が開いている…?と思って目の前まで行ったが最後おれは気が付いたら大阪王将のカウンターで「このタルタル油淋鶏炒飯を大盛りで」と目の前の肉々しいポスターを指差しながら店員さんに注文していた。大阪王将の始祖か油淋鶏炒飯の化身かなんかに操られていたとしか思えない。油淋鶏炒飯とはまず何だ。そんなもの、ほぼベジット(ドラゴンボールZで悟空とベジータポタラで合体したときの名前)じゃないか。誰も勝てるわけがない。なおてぃなんかはこの前、ツアー中にたまたま入った定食屋のメニューにご飯大盛り無料!という文字を見つけて、「うわ最悪や…マジか…マジで最悪や…」と言いながら豚の生姜焼き定食ご飯大盛りを真顔で注文していた。おれたちはご飯大盛り無料、おかわり自由、この類の文字を見つけるともうお腹の減り具合に関係なくほぼ必ずご飯を大盛りもしくはおかわりをしてしまう。もうこれは仕方がないことなのだ。詰め込めるときに詰め込んでおかないと損した気持ちになってしまうのだ。…驚くほどどうでも良い話を800文字近く書いてしまったので話を変える。

一昨日、奈良ネバーランドでNARATIVESというバンドの企画があった。簡単に言うと昔奈良のライブハウスでよくいっしょにやっていた友だちたちが就職とかなんかでバンドを辞めていたが仕事しながらでもバンドもっかいやろうや!となって組んだバンドによる自主企画の日だった。出ていた人たちも、バンドの名前や形は変わったが昔いっしょにライブハウスで音を鳴らしていた人たちばかりだった。その日出ていたバンドであの頃から名前もメンバーも変わっていないのはDROP CLOCKだけだった。転換中のBGMも昔奈良で活動していたバンドたちの曲で、とにかく過去の振り返り、思い出回想、同窓会、そんな感じの雰囲気だった。あんまりにも過去過去しすぎていて最初の方は正直、それを見せすぎるのはちょっとサブいなぁ、なんて思っていたが、結果、とても良い日だった。色んな懐かしい人たちと会って思ったが、みんな必死に今を頑張っている。給水所で見つけたらアクエリだけじゃなくどこかの温泉旅館の優待券もこっそりあげてこのマラソンが終わったら次の日に大切な人とでも行ってほしい、と思うぐらいみんな必死に走っていた。1日ぐらい過去の思い出に浸りまくるような日があったっていいやん、だってみんな今頑張ってるんだもの。心の中に潜んでいるみつをさんがそう言っていた。おれは奇跡的に打ち上げでスパークすることはなく友だちに送ってもらって朝方家へ帰った。途中でコンビニに寄ってカツ丼とカップラーメンを買った。そんなに食べれるわけがないのに。カツ丼の始祖かカップラーメンの化身かなんかに操られていたとしか思えない。案の定、カップラーメンだけ食べて、カツ丼は次の日の昼ごはんにした。高校生の頃からいっしょにバンドしていたやつで、今もネバーランドでよく会う同じ高校の友だちが1人だけいる。そいつが昨晩のライブ終わりに、増子乾杯しよや、と言ってきた。いつもライブハウスであまり飲まないし、愛想の悪いやつなので少しびっくりした。そいつが楽しそうにしているのが嬉しかった。カツ丼を食べながら、昨晩の打ち上げ中に酔った勢いで初めてそいつと撮った2ショット写真を見て、良い写真やな〜と思った。