goodbye,youth

増子央人

2018.09.05

大阪駅から奈良駅へ帰るまでに見える街はところどころが昨日の台風の影響で荒れている。根っこごと抜けて倒れている木、屋根の上で倒れているアンテナ、瓦の剥がれた屋根。電車の中、ビールを飲みながら他人事の景色を傍観する。目の前の向かい合う席には幸せそうな家族、4歳ぐらいの小さな男の子は母親に膝枕をしてもらい眠っている。おれの横に座る父がその男の子が抱きかかえているヒトカゲのぬいぐるみを引っ張って抜き取ろうとすると、その子はヒトカゲをぎゅうっと握りしめて離そうとしない。それを見て笑う母と父。なんだこの幸せな空間は。なんかビールなんて飲んでてすみません。その家族は次の駅で降りていった。耳元では大好きな音楽が鳴る。明日からツアーが始まる。