goodbye,youth

増子央人

2024.11.17

Songs Live House Tourはもう24本を終えて、いよいよ終わりが近付いてきた。

体の疲弊度合いと反比例して日に日に高まっていく熱量。同じ日は一日もなく、その一日にしかないドラマをいつも感じる。

長距離の機材車移動でふと思い出したことがある。それは中学の頃、常に何かに苛立ちながらコートを誰よりも早いスピードで駆け抜けていた衛藤のことだった。

足が速いことだけがチームメイトに勝っている唯一のことだったそいつは、一度走り出せば誰にも止められなかったが、技術がないので自分で勝手にドリブルミスをして転がっていったバスケットボールをコートの外まで追いかけているようなやつだった。いつも真面目に練習に取り組み、1人でドリブル練習をしていたことも知っていた。そいつは短所を補う練習をしながら、誰よりも走り込みをして自分の長所を更に伸ばそうと毎日走り続けていた。そいつがレギュラーになることは最後までなかった。そいつは、練習をサボりながらも技術と身長があるのでよく試合に出ていたチームメイトに毎日のように苛立っていた。きっとそれは、あんなやつらにすら勝てない自分に対しても苛立っていたんだと思う。最後の試合、県大会の3回戦であっけなく負けて引退が決まったとき、試合に出ていた副キャプテンとエースが笑いながら話していたのを見て、そいつはまたキレていた。なんであいつら負けたのにヘラヘラ笑ってるんやろう、信じられへん。そう言ったそいつの目は涙で滲んでいた。おれは負けた悔しさで会話ができず、少しでも言葉を発すると泣いてしまいそうだったので、笑い合っていたチームメイトを衛藤の隣で黙って見ていた。苛立つ衛藤の隣にいる方が、自分の心には合っていた。その試合も衛藤は、ほとんどの時間をベンチで過ごしていた。

あの頃感じた悔しさやもどかしさをいつか忘れる日が来るのだろうか。あのときの衛藤の目、言葉、日々聞いていた悔しさは、まだおれの心の中に残っている。忘れてはいけない気がする。

ツアーは残すところあと7本。何にも負けたくない。