goodbye,youth

増子央人

2024.11.08

ツアーの合間、奈良に帰ってきても結局連日朝まで飲んでいた。

あんたどこ行ってたん、えらい久しぶりやないの。久しぶりに行ったスナックの店長のばあちゃんがそう言いながら金色のピカピカしたネックレスをくれた。ペンダントトップは十字架だった。いいの!?ありがとう!と言ってその日ずっとつけながら飲んでいたが、翌日冷静になって家でそのネックレスを見たらなかなかのキラキラ具合で、身につけることはできないなと思った。奈良のお守りとして持っておこうと思う。

翌日はいつも行く店のママが退院して帰ってきたと聞いたので会いに行った。相変わらず枯れた声で辛口のツッコミを入れながら店内を元気に動き回っていたので安心した。お酒は飲んでいなかったが。 いつもいる、見た目は少しいかついが優しくて愛嬌のあるバイトのおじさんが、この日店に来たら、今日はハロウィンの仮装して接客してな!と言われたらしく、ショッカーの全身タイツを着ていた。顔だけ出して首から下はショッカーのその人が、増子くん、おれな、この前、バンドやってみたいって思ってん、と少し恥ずかしそうな顔で言った。恥ずかしそうな顔をしていた理由はそもそもそんな格好をしているからなのか、熱い話をしたからなのか、おそらく後者ではあるが、非常に紛らわしかった。40歳も超えて、音楽なんにもやったことないから、こんなん言うてんのおかしいと思うんやけど、この前初めてライブ見たバンドに感動して、自分も誰かにそう思われたい、ステージに立ってみたいって思ってしまってん、と言っていた。そのときもその人はずっと、少し気まずそうな、恥ずかしそうな、困ったような顔をしていた。ショッカーの全身タイツを着て。人生でそう何度もあるわけではない、気持ちが動いた瞬間の話を聞いておれは酷く感動し、初ライブは絶対に観に行くと約束をして、ほならこの曲送ります!!と言いカラオケでブルーハーツの夢を歌った。ショッカーから夢の話を聴いた朝4時の奈良。絶対バンドしてほしいな、と思いながらもう明るくなっていた奈良の町を歩いて帰路に着いた。

またその翌日か翌々日、どちらか忘れたが、ENTHのたくみが奈良まで来て朝まで飲んだ。お互いのツアーの話やドラムの話、色んな話をして、気がつけばいつもの店に友だちがたくさん来て、いつもの騒がしい奈良になっていた。

昨日から急に寒くなった。ツアーに持って行く服を間違えないようにしないと。