goodbye,youth

増子央人

2017.06.08

久しぶりに1日何も予定のない日。東京から車で帰ってきたのが朝方、家に着いて昼過ぎまで寝ていた。起きて録画していたバラエティーを見ながらダラダラ準備をし、映画を4本借りに行った。帰ると母が帰宅していて、粗大ゴミの日だからとゴミ出しを手伝わされた。昔飼っていた犬が外に出ないため作った木の柵を庭の隅から取り出してきた。確か父が作ったものだ。もう使い道もないし邪魔だから捨てた方がいいのはわかる。でもあまり気は進まなかった。ゲンはあの柵によく手をかけて餌をねだってきた。おれが母とケンカをして家出(庭に)したとき、柵にもたれて座り込んでいるおれの横にずっと居てくれた。クゥーンと鳴く声はおれを慰めてくれているようだった。柵をすべて捨てたあと、借りてきたSTAND BY MEを観た。80分、映画の中では一晩の話だった。10代のあの輝きは何歳になって観てもきっとあの頃と同じ輝きをしている。その光によってできた影も、照らされている本人は気付かない。あの映画に照らされている時間は日常のすべてを忘れている。だから素敵なんだ。ずっと見つめ続けると目を潰す。それすら美しく感じる。

2017.06.07

東京からの帰りの車の中。渋谷はビル風が強く、意志のない人間は立っているのも難しそうな程の強い風が吹いていた。今日で関西は梅雨入りしたらしい。雨は本当に嫌いだ。足元が濡れるのには耐えられない。動く気が失せる。渋谷では人が流れては消えていく。高架下を通るとき、おれは毎回ホームレスの寝床を流し目で覗く。普通の環境で育ったおれには、あの光景は何度見ても慣れない。あそこで人が寝ているなんて、未だに信じられない。おれにとってあれは非現実的な空間で、高架下を通ると何か変な感情になる。その高架下を抜けるとタワーレコードがある。突然視界に黄色い建物が現れ、音楽が鳴り響く。ビル風というものは奈良県民にはとても新鮮だった。ビルという建物はおれにとって仕事の象徴だ。あいつらはまるで部外者のおれを追い払うかのように強く強く風を吹かせた。あの強い風は海辺のそれとはまるで違うように感じた。とても冷たくて、無機質で、少し怖かった。