goodbye,youth

増子央人

2021.07.31

クソ暑い外の気温のせいで嫌なことばかり想像していたらイヤホンから好きなバンドの曲が流れて、頭の中に水色が差し込んだ。額から流れる汗が頬を伝ってマスクを濡らし、知らない間に呼吸しにくくなる。今年の夏は大体そういうことの繰り返しで、食べたくもないのにコンビニでアイスを買ってしまう。ライブ出来なくてストレスとか溜まんないですか?とバイト先の人に聞かれて思い返してみたがよくわからなかった。たぶんよくわからないうちにストレスが溜まって、気がつけば眉間に皺が寄っている。活字を目で追っていてもいつの間にか全然関係ないことを考え出して、何行も前から読み返してはまた同じことを考えて、結局今物語の中では誰が何をしてどこにいるのか何にもわからず本を閉じる。とりあえずベランダに出て先月から室外機の横に置いている椅子に座って遠くに描かれた入道雲を見てみる。あーめっちゃ夏の雲やん死ねよお、と思いながら昼間に見つけたお気に入りの曲を聴く。聴き終わると昔のライブ映像を見て、いつんなったらこれが戻ってくるんだろうとか思う。今年の夏は大体そういうことの繰り返しで、部屋に戻っていつから洗ってないかわからないマグカップに入った水をとりあえず飲む。足の裏についた埃をズボンで払って無意識のままiPhoneを触る。クーラーが効いているはずなのに暑い気がして扇風機を付けてみる。扇風機の羽がやたらと回っている。弱のくせにやたらと回っている。今年の夏に始めたプレステ3ぼくのなつやすみ3でははやとが虫相撲でもはや虫ではないカナヘビを出してきたがみどりちゃんと交換したオオカマキリが奇跡的な逆転勝利を収めて大興奮した。その日ついにセーブデータが8月26日まで来て、9月になると終わってしまうのでなかなかできないでいる。ゲームの中ぐらい永遠に夏休みであってほしい。