goodbye,youth

増子央人

2021.07.19

レコーディング4日目の7月8日木曜日、ブースで録ったばかりの曲を聴いていた。7年間、いつもこの感覚が迷いや不安を断ち切ってくれる。次も間違いなく大好きなアルバムになる。帰り道でも録ったばかりの曲たちを聴いた。ふと、その日の昼に連絡があった、京都大作戦中止のことを考えた。誰に対してかわからない怒りと悔しさが沸々と湧き上がってはすぐに蒸発して消えていった。敵なんて本当はいないのに、顔も知らない誰かに対して怒りの気持ちを持つこと自体虚しかった。でもこういうことは生きていればよくある。次の日の昼、10-FEETの浩一さんから連絡があった。直前で中止になってごめんなー、またチカラかしてや!という文を見て、浩一さんの笑顔が頭に浮かんだ。本人たちが一番辛くて大変なはずなのに、そんな気遣いに胸が熱くなった。そして一階のブースへ降りてコーラスが入ったばかりの曲を確認した。目を瞑ってその曲が鳴っている色んな場面を想像した。そのどれもが何よりも美しかった。

いつの間にか梅雨が明けて、朝起きると窓の外から蝉時雨、嘘みたいな青い空が広がっていた。去年使った蚊取り線香の線香立てが茶色く錆びてベランダに転がっている。クーラーの冷気で身体が重たい。

今日は大阪でライブがある。蝉の鳴き声と外の明るさで予定よりかなり早くに目が覚めた。やることがないので、好きなバンドの最近出たアルバムをスピーカーで聴いている。最近のおれたちの曲とは違う、6分越えの曲もある。その長さが気怠い朝にちょうどよかった。