goodbye,youth

増子央人

2020.07.06

つい先日、ホームセンターで向日葵の種を買ってきて、それをベランダで育てている。小さなプランター1つと、カップ麺の容器1つを使って、人生で初めて自分1人で植物を育てている。カップ麺の容器を使っている理由は、以前見た映画で主人公の家族がそれで植物を育てていて、自分でも試してみたくなったからだ。今まで黄色はあまり好きな色ではなかったが、髪を黄色にしてから、黄色いものに愛着が湧くようになった。向日葵も、あの太陽のような笑顔、底抜けの明るさが昔はあまり好きではなかったが、今はそんなに嫌いじゃない。まあわざわざ選んで買ったんだからそらそうなんだけど。何日か前にすべての種から芽が出ていた。嬉しくて写真を撮った。外を散歩しているとき、今まで気にも留めていなかったのに、それぞれの家の玄関前に置かれているプランターに目がいくようになった。あの花の名前は何だろう、あそこ日当たり悪そうだけど大丈夫かな、てかここもうほぼ道路やん、家の敷地超えてるやん、などを歩きながら思っている。新しい自分に出会ったような感覚になれて、少し楽しい。炭酸の抜けたビールが植物の成長を促すらしく、いつも温くなった缶ビールを残してしまうおれにはちょうど良かった。昨晩飲み切れなかった金麦を今朝初めて向日葵の芽にかけた。それだけでまたグッと親近感というか、愛着のようなものが湧いた。同じ盃を交わしたような気持ちになった。これもまた、植物に初めて抱く感情だった。

連日の雨で気持ちまで晴れない日々が続いている。本を読む気にもなれず、1ヶ月以上前に買った映画のDVDもまだ観ていないものが2本ある。今まで有料動画配信サービスには何も登録していなかったのに、最近は家にいるときずっと、先月登録した大阪チャンネルで過去の劇場でのお笑いライブばかり見ている。何も考えずにただ笑いたい。

少し前に、人生で初めて、仲の良い先輩からデモに誘われた。人種差別反対デモだった。誘うというよりは、こういうデモがあって、おれは参加する、ということを教えてくれた。きっと色々考えた結果直接的に誘わず、そういう教え方をしてくれたんだろうと思う。その日はバイトがあったので断ったが、バイトがなくても断っていたと思います、と返信した。デモに反対しているわけではなく、コロナ禍だからとかではなく、人種差別に対してそこへ参加するだけの強い気持ちが自分にはなかった。その人の行動力や姿勢を、尊敬、関心、羨望、どれも完全にしっくりは来ないがそういう類の感情を持ちながら、ただ遠くから見ていた。2年付き合っていた彼女からある日自分は在日韓国人だということを打ち明けられたのでその彼女と別れたと言っていた友だちのことや、去年までバイト先の居酒屋で一緒に働いていた中国人社員のことをなんとなく思い出した。

バイト先では子どもたちが短冊に願い事を書いて笹の葉に括り付けていた。「お母さんと旅行に行けますように。」「ポケモンになりたい。」色々な願い事が書かれていた。他人の願い事を見ているだけで、幸せな気持ちになった。