goodbye,youth

増子央人

2020.06.01

ライブのない日々、生産性のない無意味な時間を過ごしていると以前よりも強い罪悪感に駆られて部屋ですら居心地が悪く感じてしまう。何か新しいものを聴かなければ、何か新しいものを見なければ、何か新しいものを読まなければ。しかし実際はそう思っているだけで、流れていく生活に溺れないよう必死に泳いでいると日々がいつの間にか過ぎて行き気がつけば六月、結局何をしていてもうっすらと罪悪感のようなものが消えない。そんな中に見たGEZAN石原ロスカルのドラム30時間に、心底感動した。おれたちは、おれは、絶対にしないし、そもそもあんなことできない。また馬鹿なことをしている、なんて不器用な、そう思いながらもなぜか気になってその日は1日中心がざわざわしていた。

バイトを終えて帰ってきたら石原は叩き始めていた。あー、またやってるわ。晩飯を食べてシャワーを浴びて寝る前に恐る恐るもう一度覗いて見た。まだやってる。そういう企画だからそりゃそうなのだが、あぁ、マジでまだ叩いてるこいつ。映画セッションを見たときと同じ気持ちになった。いつもの時間にアラームをセットして寝た。朝起きてバイトへ向かう前、一応、また覗いてみた。やっぱり叩いてる。疲労した顔で、また海の前で叩いていた。昨日よりもビートにキレが出ている気がした。そんなことあるか?原付を飛ばしてバイトへ向かう。バイト中もソワソワしていた。あいつ今も叩き続けてるのか。バイトから帰ってきて晩飯を食べながら今度はしっかりと配信を見た。30時間叩き続けたあとのドラマーが後ろに構えるGEZANのライブを見てみたかった。ライブに入る前の最後の方はステージのような場所で叩いていたので、てっきり石原の周りに3人が集まってきてライブに入るのだろうと思っていたら、石原は左手に持ったカウベルのようなものを叩きながら立ち上がって歩き出した。少し歩くとギターの音が聞こえてきた。波打つ海の前、砂浜の上にセッティングを済ました3人が立っていた。映画を観ているのかと思った。とにかく綺麗だった。アンコールを終えたあと、イーグルさんが海に行こう!と言って波打ち際へ1人で飛び込んで行った。ホームボタンを押して、iPhoneを机の上に置いて、すっかり止まっていた晩飯の続きを食べた。そのあとLOSTAGEの奈良ネバーランドでの配信ライブを見た。おれはやっぱり血の通った音が好きなんだと思った。

もうすぐホタルの見頃の時期になる。実家の近くの田んぼの用水路では毎年ホタルを見ることができた。この前空を見上げると、入道雲が見えた。机の上に置いていたチョコレートは夕方には溶けて柔らかくなっていた。もうすっかり夏が来ていた。