goodbye,youth

増子央人

2020.05.17

先日、スーパーでお弁当とおつまみメンマを手に取りレジへ行こうとしたら店員さんが惣菜コーナーに置いてあるおつまみメンマに半額のシールを貼り付けていたのでおれはダメ元で店員さんに、あの、これも、いいですか…?と恐る恐る手に持っていたおつまみメンマを差し出すと店員のお兄さんは笑顔でシールを貼り付けてくれた。そのあとにおれが持っていた弁当を見て、あ、それも貸してください!と言って半額シールを貼り付けてくれた。この大変なときに、わざわざそんな優しさを渡してくれたことが嬉しかった。勿論単純に値段が半額になったことも嬉しかった。惣菜コーナーには、アルコールスプレーと布巾を手に持ち弁当や惣菜の容器を拭いてまわっている店員さんも何人かいた。いつもはやらなくていい仕事が増えるときほど面倒くさいことはない。ウイルスに苛立ちながらも、色々な人たちのおかげで日々の生活を送れていることを再認識した。その日の晩飯だけ買うつもりだったが、感謝の気持ちを込めてそのスーパーでその日の晩飯の他に缶ビールを6本とポテトチップス2袋も買って家へ帰った。缶ビールが重たかった。

さっき観た映画と先週観た映画はどちらも主人公が最後に死んだ。それでもバッドエンドとは言い切れなかった。エンドロールが終わったのでテレビを消して半分以上残っている缶ビールを机の上に置いたまま服を着替えて家を出た。宇宙ステーションが見えると聞いたので期待して夜空を見上げたが月すら見えないほど曇っていた。真っ暗な小学校の横を通りいつものベンチへ向かった。途中で酒を売っている自販機を見つけてビールを買おうと思ったが財布を置いてきたことに気が付き素通りした。机の上の缶ビールが残ってるからもったいないよ、という声が心の中で聞こえたがあれはぬるくなっていたのでもう飲む気になれなかった。てかそういえばソースマヨ味のベビースターもチョコ2倍のカントリーマアムも袋開けたまんまだ。まあいいか、部屋に戻ったら食べよう。

ベンチの目の前に生えている木から青臭い匂いがした。相変わらず月は見えない。前を通った人から、昔の誰かと同じ匂いがした。誰だったか思い出そうとしているうちにその匂いは風に消されてまた青臭い匂いに戻った。