goodbye,youth

増子央人

2020.04.18

ポテチと水を買いに、コンビニへ行った。途中で通る喫茶店や居酒屋を入り口から覗くと、従業員同士が暇そうに喋っていた。居酒屋がたくさん入ったビルの前でキャッチをするお兄さんに元気はなく、ぼーっとただそこに立っているだけのように見えた。喫茶店iPhoneを触りながら時間を潰している若い女の子。ネットから外出自粛を呼びかける芸能人。宅配業者にアルコールスプレーを振りかける老人。何を言っているのかわからない総理大臣。以前と変わらず電車に乗って出勤を続ける父親たち。そこにはたくさんの事実が転がっているだけで、真実なんて何一つわからないのに、知らない人のことを、何をしているんだこいつは、と思うことが圧倒的に増えた。

バイト先は変わらず営業している。できることなら家にいたいが在宅ワークをできない職種の人たちは家にいるだけでは生活ができないので、変わらずバイトは続けている。客はほとんど来ない。それでも営業している。街の飲食店もそう。こんな中外出自粛要請を無視して外でご飯を食べる馬鹿のために?そしてその僅かな馬鹿のおかげで首の皮一枚繋がっている?事実はそうかもしれないが、きっとそんな話じゃない。ガラガラの飲食店を見るたびに、ニュースで取材されていた飲食店の店長の、進んでも地獄、立ち止まっても地獄、という言葉を思い出す。

ニューヨークでは命の選別が迫られるケースも想定し始めている、と少し前にニュースで見た。その人はもう先が短いし助かる可能性も低いから、若くて回復力の高いこの人に人工呼吸器を。そんなことが本当に起ころうとしているのか。しばらくそのニュースを見ていたが途中でいつも見ているバラエティ番組にチャンネルを変えた。1人で声を出して笑いながら缶ビールを2本飲んだ。

コンビニから帰ってくる途中、マスクをつけながらランニングをしている男の子と、細い路地の脇にある小さな神棚に向かってお祈りしている女の人を見た。二人とも、未来を信じているように見えた。そのあと、"世界人類が平和でありますように"と書かれた白い札がかかっている家の前を通った。調べてみると、何かの宗教の言葉らしい。家に帰って冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ポテチといっしょに開けた。いつもの味がした。