goodbye,youth

増子央人

2020.01.07

朝7時、ベッドの上で突然目が覚めた。昨晩の記憶が途中からない。部屋を見渡して絶望した。床は濡れていて、靴が4足床の上に転がっていた。何かを拭いたあとのずぶ濡れのキッチンペーパーの塊がソファの下に落ちていた。読み終わるまでもう少しだった太宰治ヴィヨンの妻はずぶずぶに濡れて、床に落ちていた。とりあえず乾かそうと思い、ベランダに出した。部屋のところどころに茶色い何かがついている。床に広がる液体に触れるとベタベタした。水ではなかった。2リットルの水が入っていたペットボトルと料理酒のペットボトルがソファの下に転がっていた。中身はまだ半分ぐらい入っていた。水のペットボトルのキャップはなく、料理酒のペットボトルは蓋が引きちぎられていた。リュックサックにも茶色い何かがびっしりこびりついていた。うんこか…?おれはついに、人として終わったのか…?と思ったが、味噌だった。あぁよかった、味噌か。と思ったが何も良くない。醤油の匂いもした。何があったのかさっぱりわからず、昨晩一緒に飲んでいたれおなに連絡をした。「2軒目から帰ってきて増子を部屋に入れたら、ごま油とか床にまいてたで。」理解ができなかった。一軒目の居酒屋でたまたま会ってそのまま一緒に飲んでいたRED SNEAKERSのやまもっちゃんも家まで送ってくれたらしく、ごま油はさすがに可愛そうやからとごま油がまかれていた部分だけ拭いてくれたらしい。キッチンペーパーはそれだった。一体どんな酔い方をすれば、部屋にごま油や味噌や料理酒や水をばらまくのか。床を美味しく調理して食べたかったのか。さすがにこんなことは初めてだった。iPhoneで好きな曲をかけながら、濡らしたタオルで床を拭いた。ベタベタがなかなか取れない。絶望、自己嫌悪の早朝。二日酔いで吐きそうだった。1時間かけてなんとか部屋をリセットしてもう一度寝た。昼過ぎに起きて、この前買った町田康のしらふで生きる-大酒飲みの決断-を持ってファミレスへ向かった。そのあとスタジオへ行き、スタジオが終わってからやよい軒で肉野菜炒め定食を食べて家に帰った。部屋に入るとまだうっすら醤油の匂いがした。できることならしらふで生きたい。