goodbye,youth

増子央人

2019.11.26

最近揚げ物ばかり食べていたので、やよい軒へ行きしょうが鍋定食を頼んだ。本当はとりかつ定食(タルタル付き)を頼みたかったが野菜を摂らなければいけない気がしてグッと我慢した。一人暮らしになって約一年、ほぼ毎日自分が食べたいものばかり食べていたので、急に身体のことが心配になった。大人になったんだと思った。店員さんが持ってきてくれたしょうが鍋は誰が食べれんねんというほど煮えたぎっていた。火山の噴火口から出汁を取ってきたのか。猫舌のおれは勿論店員さんが持ってきてから5分程待って鍋に手をつけた。やはり何か物足りなさを感じたが身体に良さそうなことをしている気になったのでなんだか気持ちが良かった。

この前、東京で就活をしていた妹から、就職が決まったとLINEが来た。ずっと憧れていた、デザイン関係の会社で働くらしい。よほど嬉しかったのか、メッセージが立て続けに送られてきた。その最後に、お兄と仕事できるように頑張るわあ、という文が割れたiPhoneの液晶に浮かんだ。家族というのは本当に不思議だと思う。身体が少し軽くなった気がした。7年前に奈良を飛び出した妹は、少なくとも今日まで東京の街に潰されなかった。

この部屋に引っ越してから、ドアを開けて部屋を出るとき、外の景色の美しさにいつも力を貰う。もう一年が経ったのですべての季節を見たが、どの季節の景色も綺麗で透き通っていた。つい写真を撮ってしまうので同じような写真が何枚も溜まって、消して、また撮ってを繰り返している。奈良は良い街だと思った。