goodbye,youth

増子央人

2019.10.13

台風19号ハギビスが過ぎた名古屋の空は青一色。この色は奈良で親知らずを抜いたあとに見たあの青空と同じ色だと思った。最高気温は27度。DAIRIKUに貰ったセーターをやっと着ていけると思ったのに、今日も無理だ。27度は汗をかく。仕方なくいつものロンTに袖を通した。池下CLUB UPSETに着いてすぐ、たまたまフロアにいた店長に挨拶して少し話した。ソールドアウトしたね。あんなに名古屋苦戦していたのにね。少し前まで名古屋にはあまり良い思い出がなかった。それでも毎回来てくれる数人の顔はしっかりと覚えていた。そうか、今日の名古屋、池下CLUB UPSETでのワンマンライブはソールドアウトしたのか。不思議な気持ちになった。今日は当日券も出ないらしい。まだ交通機関が麻痺している地域もあると思うので、みんなが無事にこの場所まで辿り着けることを祈る。

リハーサル前、コメダ珈琲に来ると席はカウンター以外が満席で従業員はキッチンに1人とホールに2人。ホールの1人は外国人で誰が見てもわかるほどにあたふたしていた。頼んだストレートティーは30分後に来た。あからさまにイラついているもう1人のホールの従業員。彼は日本人で眼鏡をかけたロン毛の男性。不安そうに動き回る外国人従業員。頼むから誰も怒らないでくれ、そう願いながらストレートティーを飲んだ。いっしょに頼んでいたガムシロップが既に入っていた。甘くて美味しい。誰も怒らないでくれ。キッチン従業員のベテランっぽいおばさんが笑顔でホールの2人に指示している。ホールの眼鏡の従業員に段々と笑顔が戻ってきた。遅れてごめんなさい、と外国人従業員がテーブル席のおばさん2人に料理を持って行った。全然大丈夫よお、と笑顔で返すおばさん2人。良かった。ここのお客さんはもしかしたらみんな飲食店でのアルバイト経験がある人なのかもしれない。キッチンのおばさんは、もしかしたら輪廻転生をもう3回は繰り返した人生3周目の人なのかもしれない。そろそろ日本は義務教育に飲食店勤務を入れるべきだと思う。まあそれはおいといて、異国の地で仕事をするというのは、どういう感覚なのだろう。したことがないからわからない。今日もみんな頑張っている。頑張っていない人などいないのかもしれない。頑張っていない人は、おそらくこんな風に目に止まらない。勝手に意識の外に置かれる。小さい頃、砂場の砂をざるのようなものですくってサラサラの砂だけ取り分けて遊んでいた。ざるに残った荒い砂は捨てて、サラサラの砂だけ増やしていった。それに似てるな、と思った。そんなことを考えていたら窓際の席に1人で座っていたおっさんが、おいまだかあ!何分待ってると思っとる!と外国人従業員にキレた。そいつは割とさっき入ってきたばかりだった。すみません、すぐにお持ちします!と慌てたキッチンのおばさんがおっさんのもとに駆け寄って言った。おっさんお前は明日から駅前の居酒屋か喫茶店でバイトしろ。ホールをやれ。