goodbye,youth

増子央人

2019.06.14

また失敗をした。スタジオ前、少し時間が空いたので駅の近くのサンマルクカフェに入って新発売のロイヤルミルクティーチョコのクロワッサンを頼んだ。いつもはチョコクロワッサンを頼む。なんとなく、ロイヤルミルクティーチョコの方を買う前から従来のチョコクロワッサンの方が美味しそうな気はしていた。が、もしかしたらいつものチョコクロワッサンよりもこちらの方が美味しいかもしれない、と、少し期待して買ったが、やはりチョコクロワッサンの方が美味しかった。いつもそうだ、新しいものに目が行って、そちらに手を出し、後悔をする。もう何年もそんなことを繰り返している。家を出るときは雨が降っていなかったのに、電車を降りて駅から出ると生駒の町は雨に濡れて空気も重たくなっていた。電車でスタジオへ向かうときはほぼ毎回、駅の近くの宝くじ売り場でスクラッチ宝くじを一枚買う。もう宝くじ売り場のおばさんにもさすがに顔を覚えられているだろう。買う前に毎回、万に一つの可能性で100万円が当たったらどうしよう、いや、せめて1万円でもいい、1万円ぐらいなら当たる可能性はある、と脳内で独り言をつぶやいているが、1万円すら当たったことはない。今日は200円が当たった。一枚200円なのでプラマイ0だ。10円玉で削ったスクラッチの券をおばさんに渡して200円を受け取り、財布に入れた。今日も何も起こらない。香港では国民が大々的にデモを行っているらしい。寝起きのベッドの上でデモに参加していた1人の国民が数人の警察にラバーブレットで殴られている様子の動画を見ていた。寝転がったままデモの原因をネットで一通り調べて、腹が減ったので起き上がってお湯を沸かしてカップ焼きそばを作って食べた。あくびが止まらなかった。床の上の髪の毛やホコリが気になったので掃除機をかけて、洗濯物を干した。相変わらず、日々は川のように勝手に流れていく。ただ漠然と生活費を稼ぎ、ドラムを叩き、アウトレット家具屋で買った安いベッドの上で眠る。日々には音楽が流れて、文字の中で話は完結し、ハッピーエンドのあの映画はフィクションで、日本人の、少なくともおれの周りにいる人の多くは中国人を嫌っている。情報は溢れ、承認欲求の海で溺れているが溺れていることすら気付かないまま人々は溺死。明日から4日間レコーディングが始まる。完成したものを聞いて心がどれだけ弾むのか、再確認したい。