goodbye,youth

増子央人

2019.05.16

近所の閉店したたこ焼き屋の前には新しい3階建ての小さなビルが建っていた。その場所はずっと工事中だったが防音シートがなくなってまるでそこに突然現れたかのように綺麗なビルが建てられていた。おばあちゃんが1人で経営していたたこ焼き屋の窓ガラスには"店を閉めさせて頂きます 長い間有り難うございました"の貼り紙が申し訳なさそうに貼り付けられていた。バイト先では、大学生の後輩が「僕、〇〇とやったんすよ」と、先月に店を辞めた女の子とセックスしたということを暴露していた。おれには関係なかったがその女の子は少し可愛かったので、妙な気持ちになった。気分の良いものではなかった。営業中暇だったので、最近名前をよく聞くバンドのMVをYouTubeで見てみたが、何も良さを見出せず驚くほど無駄な時間を過ごした気になり見るのをやめてiPhoneをポケットに閉まった。家に帰ってきて部屋のドアを開けるとシンクの横に溜まった缶からうっすらとアルコールの匂いがした。昼過ぎにライブハウスに入りをしたときのバーカウンター付近の匂いと同じ匂いだった。少し嫌な気持ちになった。部屋干ししていた洗濯物を畳み、洗濯機を回して溜まっていた洗濯物を干した。あの瞬間はいつも死ぬほど面倒くさい。今日もなんとか洗濯物を干した。主婦は、母は、偉大だ。部屋は洗剤の清潔な匂いに変わっていたが、やはりシンク付近だけは乾いたアルコールの匂いがした。スタジオへ行く前にローソンの前で見た夕陽がとても綺麗だった。明日、缶をまとめて捨てようと思った。