goodbye,youth

増子央人

2019.02.01

機材車は徳島から奈良へ走る。今日は打ち上げがなかったので、機材搬出をして松屋で飯を食べてすぐに高速に乗った。ライブ前、アフロさんとバイトの話をした。おれは何歳までバイトをしているだろうと少し考えたがそんなことは月の隣に光るあの星がどのくらい離れた場所にあるのかを考えることと同じぐらい不透明で難しかった。MOROHAのライブをバーカウンターの隣で見た。ビールを2杯飲んだ。千円。コンビニなら4本は買えたな〜と、ライブハウスで酒を買うときはいつも考えてしまう。たまに、飲みたくなったらライブハウスを出てコンビニまで行きビールを買ってしまうこともある。今日のビールは現実を薄めるために飲んだ。ステージ上のアフロさんの言葉を素面で受け取ることはできなかった。なんならそのまま飲み過ぎて潰れたかった。あれは楽しいから飲む酒ではなかった。明日新しいバイト先の面接を受けに行く。受かるといいな、とアフロさんはおれに言った。悔しさや惨めさ、そういったものは全部明日を走るエネルギーに変わっていくが、そういったものをエネルギーに変えるためのエネルギーも必要になる。飲み会の帰り道、ふと襲ってくる虚無感は、恐ろしい。記憶がない方がよっぽどマシだ。中途半端な意識は余計な思考を進めてしまう。機材車は大鳴門橋を走っている。窓の向こう、橋の下には真っ暗な海が広がっている。風で機材車が揺れる。