goodbye,youth

増子央人

2018.09.12

遠征中は、沢山書きたくなる。たぶん、いつも見ないものを見るし、いつも会わない人と会うし、いつもより1人になれるからだ。ずっとどこかへ旅をしていれば、ずっと何かを書くことができるんじゃないかと思う。機材車の窓からは青空が見える。この遠征中ずっと雨続きだったので、初めて青空を見たかもしれない。機材車は北上し、仙台へ向かっている。昨日は昼に西槇さんの写真展を見に原宿まで行った。西槇さんの写真は、とても好きだ。ど素人のおれは言葉では上手く説明ができないが、とても好きだ。写真を見て、あの生活が羨ましく思った。喫茶店のようなところで展示をしていたので、ハートランドを一杯飲んで、西槇さんと少し話しをして、展示場を出た。そのあと山手線と中央線を乗り継いで高円寺へ行き、せんちゃんと初めて2人で飲んだ。これと言った濃い話はしていないが、居心地は良かった。入った居酒屋には犬がいた。というより、犬がいたからその居酒屋に入った。シェパードのような見た目だが、シェパードほど大きくはなかった。源太郎のことを思い出した。途中から出勤してきた店員が若いオネエだった。金髪で刺青の入ったそのオネエを見るなり犬は仰向けに寝転がって腹を見せた。オネエは両手でガサツに犬の腹を撫でて、犬は嬉しそうにしていた。あのオネエはきっと、とても良い人だ。二軒はしごして、せんちゃんは夜勤へ向かった。危なかった。もう一杯飲んでいたら、きっと夜勤を休ませて朝まで付き合わせていた。おれは上機嫌で音楽を聴きながら慣れない東京の電車に乗って帰った。