goodbye,youth

増子央人

2018.05.17

奈良から東京に向かう車内。通っていた中学校の横を通った。おれが通っていたときに使われていたボロボロの体育館はかなり前に取り壊されて、新しい体育館が建っていた。汗も涙も染み込んだあのボロボロの床は、もうとっくに限界だったみたいだ。高校生の頃、とにかく可愛くて人気者だった水球部のマネージャーが結婚したことを、インスタで知った。あんまり驚かなかったし、特に仲良くもなかったけど、少しショックだった。一昨日のバイト終わり、おれは長い広い階段の真ん中右寄りの段に座ってスタジオの時間まで本を読んでいた。おれの左上には、ウイスキーの瓶を持ったおじさんが空を見上げて座っていた。おれの真下には、女子高生が2人で楽しそうに話しながら座っていた。先月、大阪の街を歩いていたら、小汚いおじいさんが歩道の端で流れて行く通行人に向かって土下座をしていた。その前には小さなダンボールが置いていて、いくらか小銭が入っていた。おじいさんは顔を上げず、ただ額を地面につけて土下座をしていた。今度の奈良のライブに、バイト先の後輩が初めてライブを見に来てくれることになった。去年、腰を悪くして歩けなくなり入院していたあの人のお見舞いに行った。15年ぶりぐらいに会った自閉症のその人は、昔と同じように、小さな財布から小銭を出して、ジュースを買ってくれた。いつかなかとのライブに行きたいから、頑張って足を治すと言ってくれたその人は、今は退院して、歩けるようになったらしい。その人からこの前、おれが松屋で牛丼を食べていたとき、突然テレビ電話がきた。とても元気そうだった。この前の名古屋で、田原さんが失踪してから、アルカラのライブを初めて見た。たいすけさんが珍しく声を荒げて歌った歌詞が、そうではなかったのかもしれないが、まるで田原さんに叫んでいるかのように聞こえた。

今朝は濁った曇り空のせいで、いつもなら見える遠くの山が見えなかった。今は見えないから不安になってしまうだけで、晴れの日には、あの山もまた姿を現して、不安な気持ちなんてどこかに飛ばしてくれる。いつか、小説なんて書いたら、あの日のことも、あの人のことも、街で見かけたあの人達のことも、書いてみたい。