goodbye,youth

増子央人

2018.04.25

電車の窓から見える大和川は昨日の雨で荒れていた。灰色の空は見ているだけで生気を吸い取られそうになる。一昨日、Made In Me.という横浜のバンドのひことたまたま奈良で飲んだ。年齢は一つ下の初対面のひこはおれのことを一方的に知ってくれていて、とても慕ってくれた。なんだかおれはとても変な気分だった。おれの全然知らないところで、バンドのことを知ってくれていて、おれのことも知ってくれていて、会ったその日から慕ってくれて、当たり前じゃないその状況に、少し良い気分になった。バンドやりだした頃、打ち上げで乾杯しに行ったとき、おれのことなんて眼中にもなかったあのツアバンの先輩たちの目をふと思い出して、まだまだ頑張らないといけないと思った。ひこはとても良いやつだった。こういう時間と出会いを大事にしたいと思った。

次の日、バイト先は相変わらず不倫寸前のシングルマザーの話で盛り上がっていた。何の興味も湧かないその話題ぐらいしか話すことがないということに興ざめし、一日中やる気が起きなかった。バイトから上がると、三重の婆ちゃんからLINEが来ていた。最初は迷惑LINEのようなものかと思ったが、本当に婆ちゃんからだった。どうやら最近スマホを買って、LINEを始めたらしい。「ばあちゃんスマホしてるゆどまだむつかしいよ」という文から、頑張って打ったことがヒシヒシと伝わってきて、思わず笑ってしまった。疲れが少し、和らいだ気がした。