goodbye,youth

増子央人

2018.04.13

名古屋でのライブが終わって、家に帰ってきた。野菜ジュースを飲み、風呂に入り、歯を磨いて、ベッドに入った。今日も良い日だった。

寝転びながらiPhoneの写真フォルダを見返していると、昔飼っていた源太郎の写真を見つけて、また一生懸命、ゲンのことを思い出していた。こんな目をするときもあったなぁ、吠えた声はあんなんやったなぁ、甘噛みよくしてたなぁ、食パンをあげたら庭に埋めに行ってたなぁ、散歩してるときよく競争したなぁ、よーいどんでずっと勝てなかったのに、最後の方はおれのが早くて少し寂しかったなぁ、雷が大嫌いやったなぁ、抱きついて寝たこともあったなぁ、こたつに入って母さんに怒られてたなぁ、一度家を脱走して家族全員で必死になって探していたら、ご飯の時間にしれっと帰ってきてたなぁ、ボールは取ってきても離さなかったなぁ、お手も何にもできなかったけど賢かったなぁ、家族旅行に行くから三重のばあちゃんちに預けたとき、離れて行くうちの車にずーっと吠えてたなぁ、旅行が終わって迎えに行ったとき、大はしゃぎしてたなぁ、車に乗せたらずーっと窓の外を見てたなぁ、あとなんだっけ、あとなんだろう。写真を見たとき、一瞬、ゲンのことを忘れかけている気がして、とても怖くなって、必死になって思い出した。ゲンに関する記憶は何一つとして、失いたくない。それでもやっぱり少しずつ、少しずつ、記憶は薄れていくもので、それが凄く怖い。それでもたまに聞こえてくるあの鳴き声は、いつまでもやっぱりゲンの声で、ゲンを拾ったあの公園は、いつまでもやっぱりゲンの公園で、それはたぶん、これからもずっとそうなんだと思う。

これだけ寝る前にゲンのことを書いたんだから、今日ぐらい夢に出てこいよ。もし夢で逢えたら、またあの公園に行こう。