goodbye,youth

増子央人

2018.04.06

雨に濡れたお城祭りを横目に赤い近鉄電車が走り抜ける。今日は横浜へ向かう。桃色の桜はほとんど散ってしまった。この街に住む人たちの新生活への不安が湯気になって蒸発して雲になり、それが4月の頭の今日のような曇り空を作っている。その雲が涙のような雨を降らし、毎年毎年4月の桜を奪っていく。明日せっかく同級生の阿部りなが花見しようって、自主企画イベントを奈良NEVERLANDで打つのに。もう少し待ってくれてもよかったのに。

先週、東京で電車に乗っているとき、窓の向こうにスカイツリーが見えた。空気中に分散する大量の花粉のせいで、窓の向こうの景色は天気が良いのに濁っていた。「おれはあんなもの認めんぞ。何がスカイツリーだ。東京タワーがどれだけ東京を支えてきたと思ってる。おれの中ではいつまでも、東京タワーが一番でかいんだ。」そんなおじさんいそうだなぁと、濁ったスカイツリーを見ながら思った。信頼は、歩んできた道のりでしか得られないから、まあこれからそういうのはついてくるさ。スカイツリーお前は楽だよ、そこに突っ立ってるだけでいいんだから。雨の日も風の日も、雪の日も嵐の日も猛暑の日も、そこに突っ立ってるだけでいいんだ。…まあそれもなかなかしんどそうだけど、東京タワーはもうずっとそんなことしてるんだ。あぁでもスカイツリー、お前がこの先ずっとそこに立っている年月分、東京タワーも同じ年月を積み重ねるのか。…勝てないかもなぁ。お前もおれの婆ちゃんみたいに、先月武道館でライブしたマイヘアみたいに、あんなにしんどかった外練でも一回も手を抜かなかった後輩の中ちゃんみたいに、誠心誠意、真面目にやってくしかないみたいだなぁ。そういえばあんまり関係ないかもしれないけど、今年で平成は終わるらしいぞ。SMAPが解散して、安室奈美恵が引退して、とんねるずのみなさんのおかげでしたが終わって、めちゃイケが終わって、もう次の時代に行くらしいぞ。めちゃイケの最後は、ひどく感動した。何かが終わるってことはやっぱり、寂しいことなんだ。でも新しいことが始まるワクワクも、同じぐらいある。スカイツリー、お前のその天にも届くでかい体で、4月の不安な雲を全部、どっかにやってくれよ。