goodbye,youth

増子央人

2018.02.09

暖房の匂いで少し酔いそうになる。高速道路を走っている。相変わらずなおてぃが黙々と運転をしてくれている。えーすけは一番後ろの席でイヤホンをつけてお笑いの動画を見て笑っている。おれは足を伸ばして寝れるスペースをせっせと作ってそこに横になりながら文字を打っている。

昨日「妻に捧げた1778話」という本を読んだ。涙無しでは読めないと少し前にテレビで紹介されていて気になっていたので本屋さんで買ってすぐに読んだのだが、最後まで読んでも泣かなかった。感動こそしたが、おれにはまだ少し読むのが早かった気がした。読み終えたので途中まで読んでいた太宰治の「津軽」に戻ってきた。一丁前に津軽なんて読んでいるが、正直まだあんまり面白さを分かっていない。だから読んでいる途中なのに他の本に浮気したりしている。本を読みたいと思ってから、例えば音楽をする者がビートルズを聞いたことがないなんて言えば、あれ、こいつ偽物なんじゃないか?と少し疑ってしまうように、(これはただのおれの浅はかな猜疑心だと思う)日本の有名な文学を全く知らないことはダメなことなんじゃないかと思い、まずは昔の有名な文学作品を読んでみようと、夏目漱石のこころを読んでみた。結果半分も読まずに挫折してしまった。さっぱり面白さが分からない上に昔の言葉遣いがまるで古典の勉強をしているかのような気持ちになって嫌になってしまった。そのことを本が好きな友だち(pollyの越雲龍馬)に話すと、「夏目漱石は確かにちょっと難しいよ。太宰治の方がまだわかりやすくて面白いと思うよ。」と言われ、あ、やっぱり夏目漱石は難しいんか、よかった、と、自分はまるで文学の良さを理解できない猿なのではないかという不安が解消されたのを覚えてる。そしておれは龍馬に言われたまま太宰治の「人間失格」を買って読んでみた。スルスルと読めたし、古典のような言葉遣いもほとんどなかったし、とても面白かった。一冊ですっかり太宰治の素晴らしさに取り憑かれたような気になった。そしておれはもっと彼の文章を頭に取り入れたいと思い、古本屋でワクワクしながら「斜陽」と「津軽」を買って、今「津軽」を読んでいる。読む前は、これを読んで太宰治ワールドにどっぷり浸ろう、一体彼はどんな文章を書くんだろうとドキドキしていたが、実際の、津軽を読んでいるときのおれの心境は、"はぁ〜早くこれ終わらんかな〜次に行きたいねんけどな〜あれまだこんだけしか進んでへんやん、ねむ"だ。まあせっかく買ったので最後まで読もうとは思う。読み切ると何か面白さに気付くかもしれない。まったく気付かないかもしれない。