goodbye,youth

増子央人

2018.02.04

店長が帰ったあとの閉店後の店で、ドアの鍵を閉め、奥の部屋でコンビニで買ってきたビールをあけた。今年就職をするので春にバイトを辞める後輩と、初めて2人で酒を飲んだ。そいつはビールを二本飲んだあと、「恥ずかしくて誰にも言ったことないんすけど、おれほんとは芸人になりたいんすよ」とおれに打ち明けた。そいつはそのあとずっと口癖のように「照れ臭いな」と呟いていた。他にも、色んな夢の話をしてくれた。「おれやりたいこと沢山あるんすよ」と言っていた。そいつの青さにつられて、おれも初めてする話を沢山した。恥ずかしさなんて1つもなかった。気がつけば朝になっていた。そいつはそのまま寝ずに朝のバイトへ向かった。大丈夫何も不安なことなんてない。大丈夫何も恥ずかしくない。酔っていたせいか、いつもより気が大きくなっていた。「10年後、お互いやりたいことできてたらいいよな」といういつもなら照れ臭いセリフも、安いビールが溶かしてくれた。そいつとまた飲みに行く約束をして、霜の降りた田んぼの見えるいつもの道を通って家へ帰った。朝8時ぐらいに家に着いた。その日の昼に予約していた美容室はキャンセルした。