goodbye,youth

増子央人

2018.01.28

昨日はスタジオの時間が昼に変わったので、名古屋から帰って来て少し寝てからスタジオへ向かった。時間が変わった理由は、えーすけが翌日の弾き語りライブの練習を夜にしたいからとのことだった。新曲をひたすら練った。あまり会話をしないまま音だけを鳴らし新曲を作る。スタジオが終わり、このまま家に帰るのは勿体無いと思ったので駅の喫茶店で本を読むことにした。本を読みながらいつの間にか睡魔に襲われていた。増子さん!と横から女の人に声を掛けられ目を覚ました。声の方を見ると昔予備校でバイトをしていたときの生徒が笑顔でそこに立っていた。彼女は真新しいリクルートスーツの上から大人びたコートを羽織っていた。当たり前だがまるであの頃とは別人のようだった。彼女は隣に座り、喫茶店が閉まるまで少し話をした。東京で就職が決まったと言っていた。彼女から発せられる言葉たちは、不安で曇りながらも、芯の部分はキラキラと宝石のように輝いていた。おれは慎重に自分の言葉を選びながらその子の発言に返答した。もうあの頃から5年も経ったのか。彼女の真っ黒だった髪の毛は色落ちした茶色に染まっていた。4月までに黒染めしないといけないんですよと言っていた。彼女はすっかり大人になっていた。喫茶店の閉店時間になったので、同じ電車に乗って帰った。駅に着いて、いつもは聞いたことのない新しい音楽を探してそれを聞きながら家へ向かうが、その日は聞き慣れた、好きな音楽を聞いて家まで帰った。