goodbye,youth

増子央人

2017.12.14

福島の婆ちゃんに手紙が届いたと、父から連絡があった。婆ちゃんは喜んでくれたみたいだ。ありがとうなという文字といっしょに、父から福島の綺麗な景色が送られてきた。朝の白い久慈川と、当直バイトをしているゴルフ場のオレンジ色に染まる朝焼けと、家で育てている光り輝く原木なめこと、たまたま大きな胞子のようなものが2つくっ付いて目のように見える椎茸の写真。そのどれもが澄んでいた。父の住んでいる場所は奈良よりも深い田舎で、どの風景を切り取ってもため息が漏れるほど美しい。あそこでは画面ばかり見ていると、その美しい景色を見逃してしまう。父から送られてきたその写真は、どんなにいいねが多いインスタ映えのする写真よりも美しいものだった。そんなことを思いながらも現代人のおれはその写真をインスタにあげようかと思ったが、おれと父だけのものにしたくてやめた。「風邪ひくなよ」といういつもの文字で、父からの連絡は終わった。その文字を見て、ほっと一息ついて、クリスマスの匂いのする高知県の商店街を歩いた。