2018.05.20

富士そばの日替わりセットを食べ、歩いていたら見つけたタリーズコーヒーに入り、二階の窓際の席で本を読んでいた。気がつけば5時間ぐらい経っていた。その間に昨日買った本を一冊読み終えた。いつもはイヤホンをつけて音楽を聴きながら本を読むのだがそのときは途中で耳が疲れてきたのでイヤホンを外して読んでいた。後ろの席で赤ちゃんが突然泣き出した。泣き喚く赤ちゃんに初めてイラっとした。渋谷へ向かう時間になったので席を立った。アイスティーの入っていたプラカップは露点でびしょびしょに濡れていた。商店街を歩いていると何人もの綺麗な女の人とすれ違った。さっき読んだ小説の影響もあり少しムラムラしていたが、金が無さすぎてHな店にも入ることができない。全員に片っ端から声をかけたら1人ぐらいヤレるんじゃないかなんて思ったがそんなことをする勇気もエネルギーも勿論ない。考えれば考えるだけ馬鹿らしくなってきたので考えるのをやめて松屋に入った。復刻メニューのビビン丼を食べ、駐車場に戻った。予想通り機材車ではなおてぃが寝ていた。今はLOSTAGEを爆音で流しながら渋谷へ向かう車内。渋谷TSUTAYA O-EASTへ行く。

 

 

 

2018.05.19

昨日は東京で、きのこ帝国と2マンライブをした。学生時代から聞いていた大好きなバンドが、初めましてでおれたちの自主企画に出てくれたことが、とにかく嬉しかった。今日は東京オフ、今は大塚駅前の喫茶店で二日酔いの気持ち悪さをジンジャーエールで薄めている。東京で打ち上げをすると毎回、スペシャのAge Factory周りの人たちが集まり、20人ぐらいの大宴会になる。大人の人たちがベロベロになって、おれたちのことを褒めちぎってくれる。Age Factoryは必ず日本の宝になる。いつか日本の音楽シーンを変える存在になる。そんなことを、真剣な顔で言ってくる。おれたちはただ、その言葉を信じるしかない。先のことなんて誰にもわからない。今はただ、あの泥酔した大人たちの純粋な言葉を、眼差しを、世の中の汚い部分なんて何も知らない小学生のように、信じるしかない。昨日のライブの感覚を、ステージから見えたお客さんの顔を、突き上げられた拳を、ダブルアンコールの拍手を、自分たちの音楽を、信じるしかない。きっと大丈夫だ。

初夏の匂いのするこの時期は、半袖で外に出れることが嬉しくて、一駅分ぐらいなら歩きたくなる。喫茶店の窓から見える東京の空は少し狭くて、雲の流れが早い。縁石に咲く薄紅色の花がとても綺麗で、昨日のきのこ帝国のライブが素晴らしくて、さっき食べた富士そばのとろろ蕎麦が美味しくて、東京も悪くないなぁなんて思っている。

 

 

 

 

 

 

 

2018.05.17

奈良から東京に向かう車内。通っていた中学校の横を通った。おれが通っていたときに使われていたボロボロの体育館はかなり前に取り壊されて、新しい体育館が建っていた。汗も涙も染み込んだあのボロボロの床は、もうとっくに限界だったみたいだ。高校生の頃、とにかく可愛くて人気者だった水球部のマネージャーが結婚したことを、インスタで知った。あんまり驚かなかったし、特に仲良くもなかったけど、少しショックだった。一昨日のバイト終わり、おれは長い広い階段の真ん中右寄りの段に座ってスタジオの時間まで本を読んでいた。おれの左上には、ウイスキーの瓶を持ったおじさんが空を見上げて座っていた。おれの真下には、女子高生が2人で楽しそうに話しながら座っていた。先月、大阪の街を歩いていたら、小汚いおじいさんが歩道の端で流れて行く通行人に向かって土下座をしていた。その前には小さなダンボールが置いていて、いくらか小銭が入っていた。おじいさんは顔を上げず、ただ額を地面につけて土下座をしていた。今度の奈良のライブに、バイト先の後輩が初めてライブを見に来てくれることになった。去年、腰を悪くして歩けなくなり入院していたあの人のお見舞いに行った。15年ぶりぐらいに会った自閉症のその人は、昔と同じように、小さな財布から小銭を出して、ジュースを買ってくれた。いつかなかとのライブに行きたいから、頑張って足を治すと言ってくれたその人は、今は退院して、歩けるようになったらしい。その人からこの前、おれが松屋で牛丼を食べていたとき、突然テレビ電話がきた。とても元気そうだった。この前の名古屋で、田原さんが失踪してから、アルカラのライブを初めて見た。たいすけさんが珍しく声を荒げて歌った歌詞が、そうではなかったのかもしれないが、まるで田原さんに叫んでいるかのように聞こえた。

今朝は濁った曇り空のせいで、いつもなら見える遠くの山が見えなかった。今は見えないから不安になってしまうだけで、晴れの日には、あの山もまた姿を現して、不安な気持ちなんてどこかに飛ばしてくれる。いつか、小説なんて書いたら、あの日のことも、あの人のことも、街で見かけたあの人達のことも、書いてみたい。

 

 

2018.05.08

スタジオからの帰りの電車内は雨で湿気が強い。今日はスタジオの時間までのバイト中にたまたま、おれの好きだった昔働いていた先輩の話になった。少し前にここにも書いた、あの嘘つきの先輩の話だ。今日いっしょに入っていた、歳は下だが職歴はおれより上なので話すとき敬語を使っている大学生もその先輩を知っていて、その話になったのだが、おれも知ってはいたが、その先輩は驚くほどみんなから嫌われていた。何年も働いていたその先輩は、長年レジのお金を盗んでいたことがバレて、クビになった。先輩は自分を大きく見せる嘘ばかりつくし、どうやらレジのお金がなくなっていたことをしばしば他のバイトの人たちのせいにしていたらしい。盗んだお金は30万近くになっていたらしい。おれはあまり深くは知らなかったので、今日それを知って少し驚いた。だとすると、あのとき奢ってくれたコンビニのいくらおにぎりも、夜勤明けの生ビールも、しまほっけも、もしかして、盗んだお金で奢ってくれていたのかな、とその先輩との少ない思い出を振り返っていた。

先輩、お金持ちだなんて、やっぱり大嘘だったんですね。でも、あの日、いっしょにバイト上がって飲みに行ったあの席で、おれのバンドのこと店長に得意げに話ししてくれたことや、応援してるって言葉は、嘘じゃなかったと、やっぱりおれは思うんです。あのときの先輩の目は、嘘つきの目じゃなかったって、すごく都合のいい捉え方ですが、おれは思うんです。だからおれはあのとき、凄く嬉しかった。今でも、5年前に先輩が教えてくれた包丁の握り方で、魚を切ってます。先輩に教えてもらった通り、洗い終わった食器はできるだけスペースを取らないように片付けています。あのときよりずっと、綺麗な玉子焼きを巻けるようになりました。おれは先輩のこと全然嫌いじゃないんですが、今日、いっしょにシフト入っていた子が、先輩のことをただひたすらけなして笑っていたとき、おれもいっしょになって笑ってしまいました。「そうっすね〜」なんて言って、共感したフリをしてしまいました。否定の一言も出ませんでした。そのとき、自分が酷く小さく思えて、情けなくて、それなのにまた、適当な愛想笑いを続けていました。いつかおれが売れたら、キンキンに冷えたビールを奢ります。それで今回のことは、チャラにしてくれませんか。それと、おれ今、あのときの先輩と同じぐらいの歳になりました。今なら、なんで先輩が過去の自慢話ばかりしていたのか、自分をより大きく見せるための嘘を沢山ついていたのか、少しわかる気がします。

誰が否定したって、おれの中では、先輩の人生は間違いじゃない。何故かおれはそう思う。先輩の嘘も、本音も、働き続けた姿も、盗んだお金も、見せてくれた子どもの写真も、けなす後輩の言葉も、おれの逃げの愛想笑いも、たぶん忘れない。先輩は、弱い。おれは、強くありたい。

 

 

2018.05.05

朝、カプセルホテルの中で鳴るアラームを慌てて止めた。すぐに起きて顔を洗って歯を磨いて髭を剃った。昨日の晩、風呂場に来たなおてぃが「さっきビバラのリストバンドつけてる人おった…オーラルのTシャツの人らも結構おった…」とまるで麻薬密売犯が警察を見つけて怯えているときのような顔で言っていた。そのせいで朝の洗面台でおれの右隣で歯を磨いていたあのジャージの青年もおれの左隣で髪の毛を乾かしていたあの青年ももしかしてビバラのお客さんか?と少し警戒してしまったがまあなんでもいいやと思い平常運転で朝の準備をしていた。

もうすぐ会場に着く。ケータリングを楽しみにしていたのに、1週間ほど前からずっと腹を下している。神様どうして今このタイミングでおれの腹を弱くしたのですか。あのとき嘘をついたからですか。そんなの、みんなついてるじゃないですか。あいつもあいつも、嘘ばっかり言ってるじゃないですか。わざわざ自分の価値を下げるようなこと、みんな自分から言わないって、この前深夜見たドラマで言ってましたよ。おかしいな。それならあいつもあいつも、みんな毎日腹を下してるってことにならなきゃ、釣り合わないけどな。まあいいや。人は人ですよね。すみません。受け入れます。まあケータリングはめちゃめちゃ食べますけど。

 

 

2018.04.30

東京からの帰りの車の中。えーすけが突然、昔聞いてた曲を聞きたいと言い、アジカンのソルファを流し出した。歴史的名盤が車内の雰囲気を懐かしくした。今日、東京でスペシャTVの中のある番組の収録があった。その番組内でメンバーの大切なものを紹介するコーナーがあり、おれは東田直樹さんという自閉症作家の方の小説を紹介した。重度の自閉症患者の彼の書く文章は驚くほど綺麗で、初めて読んだときは感動が止まらなかった。おれにとってはまるで宇宙人と遭遇したかのような、そんな衝撃だった。重度の自閉症の彼は普段人と会話をすることがほとんどできない。そんな彼は、母親と彼自身の努力によって、文章という意思伝達手段を手に入れた。自閉症の人の頭の中という、これまで誰にもわからなかったことを、彼は文章を通して全世界の人に伝えている。彼の書く文章は本当に綺麗で、リアルで、どこか幻想的で、自閉症の人が書いているから凄い、という話でもなく、ただ表現者として素晴らしい。自閉症の人というのは、精神崩壊をしているわけでも、頭がおかしいわけでもなく、ただ自分の気持ちを、感じたことをアウトプットすることができないだけだったんだと、彼の本を読んでわかった。頭の中はおれたちと何にも変わりない。そんな不思議なことがあるのかと思った。例えばおれたちは、思ったことをそのまま口にすることができる。口にしないこともできる。お腹が減ったらお腹が減ったと言い、綺麗な星空を見たら綺麗だと言える。当たり前のこの、言葉をアウトプットするということが、できなかったとしたら。頭の中はみんなと何にも変わらないのに、感じたことを、自分だけが言葉にできなかったとしたら。そんな怖い世界は、想像もできない。みんなはちゃんと性能のいいロボットを操縦しながら生きているのに、自分だけが最初から壊れたロボットを操縦して生きているような感覚。そんな世界で生きてきた25歳、おれと同い年の彼は、母の惜しみない愛と自身の努力によって、文章が書けるようになった、それもとても綺麗な表現力で。それでも彼は、やっぱり人との会話はほとんどできない。とても不思議だ。会話ができないという自覚もあるし、自閉症の人がよくする、理解し難い行動、例えば、何もないのにずっとその場で飛び跳ねたり、突然大声で叫んだり、そういった行動のすべての理由を、彼は文字にして本の中で伝えている。ただの異常行動だと思われていたそれらの行為にも、すべてに理由があったんだ。ありがとうも、ごめんねも、言葉にできないということが、どれだけ怖いことか。どれだけもどかしいことか。そんな世界で生きている彼の文章は、何度も言うが、とても美しかった。そんなことを考えながら窓の外を見ると新東名高速の綺麗なネオンが目に飛び込んできた。その向こうには満月が1人ポツンと輝いていた。えーすけはまだアジカンを車のスピーカーで大音量で聞いている。なおてぃは黙々と運転をしてくれている。明日はまたバイトがある。もうそろそろ寝よう。

 

 

 

2018.04.28

GW初日、バイト先は何も考える間もないくらいに忙しかった。上がってからすぐにコンビニで缶ビールを買った。まだ起きてから何も食べていなかったことに気が付き、おにぎりも一つ買った。いつも行く古着屋がアメリカ買い付けから戻ってきてTシャツを新しく出したとインスタに書いていたので、帰る前に寄ることにした。缶ビールを飲みながら長い坂を登った。何人もの外国人観光客とすれ違った。おれがここで突然話しかけたらどうなるだろう、なんて意味のないことを考えながら歩いているうちに古着屋に着いた。缶ビールはちょうど飲み切った。可愛いTシャツがあったので一枚買った。店を出て、また缶ビールを買って、近くの公園のベンチに座った。隣のベンチには若いカップルが座っていた。おれは缶ビールを飲みながら色んなことを考えていた。考えていると、知らない間に眠っていたらしく、左手に持っていた缶ビールをこぼしてしまった。缶がベンチに落ちた音で目が覚めた。流れるビールを急いで止めもせずただ眺めていた。たぶん2本目の缶ビールは欲していなかったのに買ってしまったんだと思う。家に帰ろうと思い、さっき登った坂を下って駅まで歩いた。缶ビールは少し残したまま自販機横のゴミ箱に捨てた。勿体無いとは思わなかった。